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資金調達方法を知ろう! もしものための資金調達方法を総まとめ

経営課題事例

2024-05-15

企業経営をするうえで最も大事なのは企業の資金を絶やさないことです。企業のリスク管理の1つとして、さまざまな資金調達方法を検討しておきましょう。

目次

企業経営をするうえで、売上をつくり、利益を出すことも、もちろん大切ですが、最も大事なことは企業の資金を絶やさないことです。

不安定な国際情勢や頻発する災害、新型コロナウイルスのような感染症の拡大などにより、経営環境の先行きが不透明な中、企業のリスク管理の1つとして、さまざまな資金調達方法を検討しておきましょう。

なお、足元の金融経済情報など、財務担当者向けの情報は次のページからご覧になれます。

財務担当者向け情報

1.資金調達の3つの分類

資金調達方法は、大きく次の3つに分類できます。

  • デットファイナンス(Debt Finance)
  • エクイティファイナンス(Equity Finance)
  • アセットファイナンス(Asset Finance)

デットファイナンスは、銀行や保険会社などの金融機関からの借入れ社債の発行などによる資金調達で、負債(debt:デット)に計上されます。資金調達した金額(元本)と利息の返済・支払いが必要になります。

エクイティファイナンスは、株式の発行などによる資金調達で、純資産の部に株主資本(equity:エクイティ)として計上されます。資金調達した金額(出資額など)の返済は必要ありません。ただし、配当により出資者に対する支払いが必要になります。

アセットファイナンスは、保有資産の売却ファクタリングなどによる資金調達で、企業が保有する資産(asset:アセット)を基に行われます。

具体的にどのような方法があるのか、以降で見ていきましょう。

2.資金調達方法① デットファイナンス

1)銀行や保険会社などの金融機関からの借入れ

銀行や保険会社などの金融機関からの借入れ(融資)は、数ある資金調達方法の中でも初めに思い浮かぶものでしょう。資金調達時の交渉相手が金融機関だけなので、比較的手間が掛からないというメリットがあります。

一方、個々の契約によって条件などは異なりますが、定期的な利息の支払いや返済が必要になる、保証人や担保が必要になる、資金調達の条件が金融機関との力関係に左右されるなどのデメリットがあります。

金融機関からの主な借入れの方法としては、証書借入、当座借越、手形借入、手形(電子記録債権)割引、シンジケートローン、動産担保融資などがあります。なお、動産担保融資については、資産を基に行われるものであるため、アセットファイナンスの章で解説します。

1.証書借入

証書借入は、金額、利率、借入期間、返済条件などを記載した金銭消費貸借契約証書を金融機関に差し入れる資金調達方法です。主に比較的大きな額の設備資金など、中長期資金の調達に利用されます。

2.当座借越

当座借越は、当座預金の残高を超えて融資を受ける資金調達方法です。金融機関と当座勘定借越契約を結ぶことで、契約の限度内で何度でも借入れることができ、ビジネスローンなどもこれに該当します。機動的に資金調達できるため、主に短期の運転資金の調達に利用されます。

3.手形借入

手形借入は、自社が金融機関を受取人とした手形を振り出して融資を受ける資金調達方法です。基本的には、3カ月程度の短期の運転資金の調達に利用されることが多くなっています。

4.手形(電子記録債権)割引

手形(電子記録債権)割引は、期日が到来していない手形や電子記録債権を金融機関に譲渡して融資を受ける資金調達方法です。自社が資金調達できる金額は、手形の場合は額面金額から割引料(金利+手数料相当額)を差引いた金額、電子記録債権の場合は金融機関に譲渡した金額から割引料を差引いた金額となります。

なお、いわゆる「約束手形」については、2026年をめどに紙を廃止し、全て電子化する方針が示されています。

5.シンジケートローン(協調融資)

シンジケートローンは、複数の金融機関から1つの契約書で、同一条件で協調して融資を受ける資金調達方法です。幹事となる金融機関のことをアレンジャーといい、アレンジャーが融資を行う金融機関を募集して、シンジケート団として取りまとめます。

シンジケートローンでは、交渉窓口がアレンジャーに一本化されているので、複数の金融機関と交渉する必要がなく、まとまった金額の資金がアレンジャーを通じて調達できます。

シンジケートローンには、いくつかの種類がありますが、タームローンとコミットメントラインが代表的です。

タームローンとは、証書借入をシンジケートローンによって行うものです。

コミットメントラインとは、あらかじめ設定した金額・期間の範囲内であれば、金融機関が融資を実行することを約束(コミット)するものになります。コミットメントラインは、事故や災害などの緊急時に備えて契約されることも多いようです。

なお、日本生命の融資の特徴、取扱商品一覧は次のコンテンツで分かりやすく解説しています。

日本生命の融資の特徴

日本生命の融資の取扱商品

2)社債の発行

自社が社債(企業が発行する債券)を発行し、投資家などに引受けて(購入して)もらい資金を調達する方法です。社債の発行は、一般的に多額で長期の資金を必要とする際などに利用されます。また、株式の発行(後述)と異なり、経営に干渉されるリスクがないのがメリットです。

ただし、金融機関からの借入れと同様に、定期的な利息の支払いが必要で、返済も必要です。また、金融機関からの借入れと比較すると、金利や返済期間などの条件を自社側で任意に決められる一方で、調達や管理のコスト・手間が掛かるなどのデメリットがあります。

社債を発行する方法には、私募債と公募債があります。私募債は、投資家を限定する方法をいいます。私募債には適格機関投資家のみを対象とする「プロ私募債」と、投資家の性質は問わないものの募集対象となる投資家を50人未満に限定した「少人数私募債」があります。

公募債とは、不特定多数の投資家などに対して発行される債券のことをいいます。

また、企業が発行する社債には、次のような種類があります。

1.普通社債

普通社債とは、特別な権利が付与されていない社債をいいます。

2.新株予約権付社債

新株予約権付社債は転換社債型とそれ以外がありますが、実務においては転換社債型が普及しています。転換社債型新株予約権付社債とは、株式に転換できる権利が付与された社債をいいます。

転換社債型新株予約権付社債を取得した投資家は、償還期限の満期日に社債を償還するか、もしくは社債を株式に転換するかのいずれかを選ぶことができます。

なお、株式に転換された場合、企業は元金を返済する必要はありません。

投資家にとっては、株価が上がれば株式へと転換できますし、そうでなければ安定的に利息を受け取るといった選択肢があります。

3.資金調達方法② エクイティファイナンス

主な調達方法として株式の発行があります。投資家や自社の関係者などに株式を引受けてもらい、資金を調達する方法です。借入れとは異なり、返済期間はなく、返済義務を負わない点がメリットといえます。

ただし、会社法などの法令に基づく手続きなどが求められるため、管理の手間やコストが掛かる他、発行する株式の種類によっては経営への介入リスクが高まるというデメリットがあります。

株式の発行の方法は、公募、第三者割当、株主割当に大別できます。

公募は、不特定多数の者に対して募集を行う形態です。公募は証券取引所(金融商品取引所)への上場時や、上場後に行うのが一般的です。

第三者割当は、特定の者のみを相手に募集を行い、その者だけに株式を発行する形態です。例えば、ベンチャーキャピタルや自社の役員・従業員などの関係者に対して、新たに引受けてもらいます。

株主割当は、既存株主に株式の割当を受ける権利を与えたうえで、これらの者に株式を発行する形態をいいます。

また、企業が発行できる株式には、次のような種類があります。

1.普通株式

普通株式とは、当該株式を所有する株主の権利に制限のない株式をいいます。

2.種類株式

種類株式とは、取締役会での決議事項の拒否権が付いていたり、配当や議決権などの権利が普通株式と異なっていたりする株式をいいます。

主なものに、拒否権付株式(いわゆる黄金株)や配当優先株式などがあります。

4.資金調達方法③ アセットファイナンス

1)不要になった保有資産の売却

企業が保有する、事業に不要な資産を売却する資金調達方法です。例えば、活用されていない土地や建物、現在取引がなくなった得意先の有価証券、利用していないゴルフ会員権などがあります。

また、新型コロナウイルス感染症の影響などに伴うテレワーク(リモートワーク)の導入により、以前は持っていることが当たり前だった資産が、現在では不要になっている可能性があります。

例えば、オフィス家具や機器類などは、全社員が出社することが前提の数量で設置されていることから、現状にあった見直しにより資金調達とまではいかないまでも、コスト削減による資金確保ができるかもしれません。

2)ファクタリングの利用

債権を売却したり、担保として差し入れて融資を受け入れたりすることで、債権の支払期日よりも前に資金調達する方法としては、前述した手形(電子記録債権)割引の他に、後述する動産担保融資やファクタリングの利用があります。

ファクタリングは、ファクターと呼ばれる事業者が、企業から売掛債権を買い取ったり、債務者の代金支払いの保証を行ったりするサービスです。なお、利用に際しては、ファクターへの手数料が必要になることや、基本的には売掛先の同意を取り付ける必要があるので注意しなければなりません。

3)動産担保融資(ABL)

動産担保融資は、原材料・在庫・売掛金などを担保として資金調達する方法です。英語名の略称であるABL(Asset Based Lending)という言葉でも呼ばれます。企業の事業性などを考慮したうえで動産の担保価値を評価するため、「経営能力は高いが、不動産など一般的な担保が乏しい」という場合でも、相応の金額の資金を調達できる可能性があります。

4)リースの利用

リースはリース会社を通して設備を導入する方法であり、契約で定めるリース期間にわたってリース料を支払います。リースであれば、借入れなどによって資金調達を行わなくても、設備を導入することができます。

リースの利用は、直接的な資金調達方法ではありませんが、資金調達と同じような効果を得ることができるため、検討してみてもよいでしょう。

5.資金調達方法④ 助成金・補助金

国(各省庁)や地方自治体などでは、スタートアップ企業やベンチャー企業に対する助成金・補助金事業を行っています。助成金・補助金は、原則、返済の必要がないため、有利な資金調達の方法といえます。

一方で、一定の要件に該当する場合しか利用できなかったり、該当していても応募者数が多い場合などは受給できなかったりすることがあります。また、提出する書類が多い傾向がある、定期的な報告が求められる場合があるなど手続きが煩雑であることに加え、資金の使途が厳しく制限されているので注意が必要です。

なお、企業が働き方改革を進めるうえで活用できる助成金・補助金について、次の記事で、働き方改革の目的別に分かりやすく整理しています。

進めたい働き方改革!企業の生産性向上を支援する助成金
進めたい働き方改革!従業員の多様な働き方を支援する助成金

6.資金調達方法に関する一問一答

1)自社に合った資金調達法は?

資金調達にはさまざまな種類がありますが、どれを選択するかは企業の成長段階、資金調達の金額や目的などによって変わってきます。

一般的な例でいうと、実績のない創業期は民間の金融機関からの借入れは容易ではないので、政府系の金融機関(日本政策金融公庫など)から融資を受けるケースが多いです。その後、経営が安定してきたら、民間の金融機関からの借入れを行います。また、企業の成長段階を問わず、クラウドファンディングや助成金・補助金の活用も視野に検討します。

この他、最近はスピーディーな調達ができるビジネスローンも数多く出てきています。利率は高いものの、すぐに調達したい場合に利用されます。

2)全ての企業に必要な運転資金の計算方法は?

資金調達の目的は、運転資金や設備投資資金などさまざまです。特に全ての企業で継続的に必要となるのが運転資金の確保です。安定した資金繰りを実現することは、常に重要な経営課題の1つです。

必要な運転資金の金額は、

運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)-買掛金

で計算することができます。売掛金と棚卸資産は、既に販売または調達をしているのに、まだキャッシュが手元にないものです。そこから、既に購入しているのに、まだキャッシュを払っていない買掛金を差引くことで、運転資金を計算します。売掛金、棚卸資産、買掛金は全て貸借対照表で確認することができます。

3)最近の話題。経営者保証は外せる?

金融機関から借入れる際、経営者の個人保証である「経営者保証」が付けられるケースは少なくありませんでした。しかし、この経営者保証が重荷になって自由な経営ができなかったり、事業承継がスムーズにいかなかったりするという問題がありました。

こうしたことを背景に、最近は金融機関が新規の融資の際、経営者保証を求めず、また既存の融資についても経営者保証を外す動きが増えています。経営者保証を外そうとする場合、まずは金融機関に相談することから始まりますが、その際に重要となるのが、いわゆる「3要件」と呼ばれる、

  • 個人・法人の分離
  • 財務基盤の強化
  • 経営の透明性の確保

の状況です(中小企業庁「事例でみる経営者保証の解除~課題解決のポイントとその効果(2022年9月20日)」)。

4)返済計画はどう立てるか?

金融機関からの借入れなどの場合、当然ながら返済をしていかなければなりません。返済原資の簡単な求め方は、

返済原資=税引後当期純利益+減価償却費

となります。税引後当期純利益と減価償却費は損益計算書で確認できます。税引後当期純利益はコストの他、税金までを支払った最終利益です。また、減価償却費は実際のキャッシュアウトがない費用であるため、返済原資に加えることができます。

こうして返済原資の目安を計算できるのですが、その金額分のキャッシュが実際に会社にあるとは限りません。これは、売掛金や買掛金などによって、損益計算書とキャッシュの動きにズレが生じるからです。さらに、ここで計算した返済原資には運転資金に充当される部分(運転資金が増加した分だけ資金負担も増加します)も含まれるので、すべてを返済に充てることはできません。これらの点も考慮して、返済計画を立てることが大切です。

5)資金調達の「ラウンド」や「シリーズ」とは?

スタートアップ企業の資金調達で、「シリーズA」や「シリーズB」などと聞くことがあります。これは、資金調達ラウンドと呼ばれるもので、ベンチャーキャピタルなどが投資するタイミングや投資額の目安を企業の成長フェーズに合わせて区分したものです。一般的に次のように区分されます。

  • シード:起業前の段階
  • アーリー:起業直後の段階
  • シリーズA:事業がスタートした段階
  • シリーズB:事業が軌道に乗り始めた段階
  • シリーズC:事業が安定した段階

中小企業にはなじみが薄いかもしれませんが、資金調達を行うスタートアップ企業がどのような段階にあるのかは興味深いところです。

以上

(執筆 日本情報マート)

(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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