手厚い福利厚生を用意しても、社員に使われなければ意味がありません。
福利厚生を最大限に活用したいのであれば、福利厚生制度の利用率を調べたうえで、利用率の向上施策を立案する必要があります。
福利厚生で人材を集め、今いる社員のエンゲージメントを高めたい経営者は、ぜひ最後までご覧ください。
1.福利厚生の利用率が低い事実から読取れるのは?
福利厚生の利用率の向上策を解説する前に、まず利用率が低い事実から、何を読取れるかをご紹介します。
- 福利厚生制度の認知度が低い
- 福利厚生制度の申請手続き方法に問題がある
- 福利厚生制度が陳腐化している
福利厚生の利用率を調べるために、社内アンケート調査を定期的に実施する際、調査項目に含めておきましょう。
福利厚生の見直し方法については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説
福利厚生制度の認知度が低い
ある特定の福利厚生制度の利用率が低い場合、その福利厚生制度の認知度が低い可能性があります。
特に、導入まもない福利厚生制度は、低い認知度のために利用されないケースが予想されるため、導入直後の社内広報の工夫が求められます。
なお、日常的に利用する福利厚生制度(例:有給休暇制度や、在宅勤務制度・リモートワーク勤務制度など)や、職場の誰かが利用しているのを見聞きできる福利厚生制度(例:慶弔休暇制度や時短勤務制度など)は特に社内広報の手を打たなくとも、社内の認知度を一定に保てます。
一方、もしものときの福利厚生制度(例:病気休職制度など)は、利用されていても関係者が配慮して口外しないため、社員の目に触れる場所にポスターを掲示する・幹部社員研修で案内するなど社内広報を工夫して認知度を維持する必要があります。
福利厚生制度の申請手続き方法に問題がある
ある特定の福利厚生制度の利用率が低い場合について、もうひとつ考えられるのは、その福利厚生制度の手続き方法に問題があるケースです。
特に、福利厚生制度の申請手続き方法が変わったケースで、社員が「手続きが面倒」・「申請しても期限までに通らない」と思い、福利厚生制度をそもそも利用しない可能性があります。
例えば申請に承認決済者のハンコによる押印が必須の場合、決裁プロセスに時間を要し、勤務形態によっては出社が必要になることもあるでしょう。
なお、元々の利用頻度が低めの福利厚生制度は、一概に利用率の尺度で測ることはできませんが、もし前回の調査結果と比較して利用率が下がっている傾向が続くのであれば、利用のしやすさの点で問題ないか注視する必要があります。
福利厚生制度が陳腐化している
ある特定の福利厚生制度の利用率が低い傾向が続いた場合、その福利厚生制度の内容が時勢にあわず、陳腐化している可能性があります。
福利厚生の内容を見直すのが一般的ですが、思い切って廃止し、別の需要のある福利厚生に置き換えるケースもあります。
陳腐化した福利厚生を取りやめるだけだと待遇の悪化に見えて、社員の不満につながるため、別の福利厚生に置換えることが適切です。
例えば、リモートワーク主体に切替えた企業の中には、福利厚生としての通勤交通費の支給を取りやめています。
代替としてリモートワーク手当の支給するケースや、通勤交通費を旅費交通費(出張費)として定義する福利厚生制度に切替えたケースも見られます。
なお、社員側から人気の高い福利厚生のトレンドキーワードは「健康」と「仕事と生活のバランス」です。
福利厚生のトレンドについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のトレンドは従業員個人の利益から企業を成長させる力へ
もちろん、トレンドはあくまで統計で読取れる傾向なので参考程度にとどめ、社内アンケート調査の欄に社員が求める福利厚生の希望を記入させ、需要ある福利厚生の導入を検討しましょう。
2.利用率を向上させる福利厚生のチェックポイント
福利厚生の利用率を向上させるチェックポイントは次のとおりです。
- 利用頻度が高い福利厚生を揃えているか
- 申請手続きが簡素で使い勝手がよいか
- 必要な時にすぐ福利厚生の案内ができるか
- 福利厚生を社内広報やコミュニケーション促進に利用できるか
利用頻度が高い福利厚生を揃えているか
もしものときに利用できる福利厚生制度を揃えることも重要な視点ではありますが、日常的に利用しやすい福利厚生があることで、社内の「福利厚生」への興味関心を維持できます。
法律で取得日数が決まっている有給休暇以外にも、会社の判断で付与する「特別休暇」制度を設ける他、在宅勤務制度・リモートワーク制度など毎日の働き方を支える福利厚生のラインアップも充実させましょう。
申請手続きが簡素で使い勝手がよいか
昨今の福利厚生の申請手続きの利便性は「電子申請でシステム化されていること」が原則です。
ハンコの押印ありきの紙面での申請、メールで申請書添付など、煩雑な手続きがないかをチェックしましょう。
利用頻度が高い福利厚生は特に、申請者の行動に責任を負うべき人だけを設定し、申請フローの簡素化も必要で、申請時の承認者が必要以上に設定されていないかも確認が必要です。
例えば、一般社員が有給休暇を申請する場合、直属の上司が知っていれば業務上は差し支えないはずですが、その上の上司複数人の承認が必要な仕組みはスピーディとは言えず、福利厚生の利用をためらい、利用率を下げる要因になりかねません。
必要な時にすぐ福利厚生の案内ができるか
申請手続きそのものの見直しも重要ですが、社員が福利厚生が必要な状況になったとき、すぐに福利厚生を案内できる仕組みも大切です。
一番よいのは、社内向けの福利厚生の情報をまとめたサイトを作り、困った時に誰でも閲覧できるようにしておくことです。
このときのポイントは福利厚生の「制度ごと」ではなく「状況ごと」に案内することです。
例えば、社員が結婚する際に必要な社内手続きをまとめておき、その中に福利厚生として慶弔見舞金制度での結婚祝い金や慶弔休暇などについて案内しておけば、福利厚生を知らなかったことが原因の利用率の低下を防げます。
また、社内サイトでケースごとに必要な手続きをまとめておき、幹部社員への教育研修を通して「一般社員が特定の状況になった場合は案内して欲しい」と伝えましょう。
福利厚生の利用率をあげるには、福利厚生の担当者以外にも、職場で「次にどうすればよいか」について社員に助言できる者がいるようにすることが重要です。
福利厚生を社内広報やコミュニケーション促進に利用できるか
福利厚生の制度の種類にもよりますが、ポジティブな福利厚生は社内広報に利用しましょう。
福利厚生を利用した人に利用時の写真とともにコメント・感想を提出してもらい、全社で共有するようにすると、福利厚生の制度の認知度があがるだけでなく、福利厚生に対する興味関心を喚起させる効果が見込めます。
例えば、ランチサポートの福利厚生を利用し、複数の社員で指定のレストランでランチした場合、社員の写真をシェアさせることで、職場のコミュニケーションを促進できます。
可能であれば、社外発信として、採用広報にも流用できるようにするとよいですが、社外への顔出しを嫌がり、利用を控えるケースも考えられるため、福利厚生の利用申請時に写真の使いみちについて確認し、社外広報もOKの場合はチェックを入れるなど一手間を加えるとよいでしょう。
なお、福利厚生のランチサポートの例については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生でランチをサポートするなら?食事支給と費用補助を解説
(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)
生22-5321,法人開拓戦略室