経営戦略のひとつとして、「面白い福利厚生」の制度を導入するベンチャー企業は少なくありません。
世間や社員に「面白い」と思ってもらえる福利厚生は「会社の個性」を体現しており、優秀な人材を惹きつけ、会社を成長させる原動力となります。
本記事では、面白い福利厚生の企業事例から見られる「面白さ」のポイントと、企業事例の一覧、個性的な福利厚生制度について傾向と共通点をおさえ、会社を活性化させる人事制度を整えましょう。
1.面白い福利厚生の企業事例と「面白さ」のポイント
「面白い福利厚生」と称される企業事例を分析すると、福利厚生制度の内容そのもののユニークさよりも、福利厚生制度と「会社の個性」がうまく結びついているかどうかが「面白さ」のポイントになると推察されます。
具体例として「コーヒーを無料で飲める福利厚生制度」について考えてみましょう。
「コーヒーと直接関係しない事業の会社」が提供するケースでは「たまに見る福利厚生制度だな」と思われる可能性が高いと言えます。
一方、「コーヒーに強みのある食品会社」が自社の商品であるコーヒーを社員に提供するケースであれば、会社の強みによる独自性が強くなることで「面白い福利厚生」と言われます。
ただし、福利厚生の要素と関係しない事業でも「組み合わせ」によって関連性を見出すことは可能です。
例えば、北欧に関連する製品を扱う会社や、北欧の言語に由来する社名を持つ会社が、コーヒーと甘味を摂って小休憩をする北欧独自の文化「フィーカ」と組み合わせれば、うまく「会社の個性」と結びついて「面白い福利厚生」とみなされます。
また、会社が提供する製品・サービスと一見関係のない、いわば「対」になる概念を福利厚生で提供するケースも「面白い」とみなされます。
例えば、オンラインコミュニケーションサービスを提供する会社が、社員の帰省代金や旅行代金を費用補助する福利厚生制度であれば、「オンラインコミュニケーションだけでなく、対面のコミュニケーションも大切しよう」という会社側のメッセージが読み取れる点が「面白い」と評価されます。
上の事情を踏まえて「面白い福利厚生の企業事例」をまとめると、次のとおりです。
面白い福利厚生の企業事例一覧
福利厚生制度の概要 |
面白いポイント |
自社の飲食物を無料で飲み食いできる社内カフェを提供し、15分程度の短時間休憩を奨励する制度 |
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社員食堂と、自社の持つノウハウを生かした昼食の現物支給を行うランチサポート制度 |
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少人数でまかない食を作って食べる、昼食の現物支給のランチサポート制度 |
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社員同士がスポーツや趣味などを通じて活動する際に費用補助をする、いわゆる「サークル活動」制度 |
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特定の条件で特別休暇を付与する制度(例:ペットや応援している芸能人、キャラクターに関する用事、失恋・結婚・離婚など) |
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社員の誕生日に花束やメッセージカード、会社独自のプレゼントなどの物品を贈与する「バースデーイベント」の制度 |
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長く勤めている社員に対して長期勤続休暇制度と、旅行のセットプランの費用を負担する制度(例:特定の宿泊施設の宿泊費と往復交通費) |
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社員の帰省代金や旅行代金を費用補助する福利厚生制度 |
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くじなどを引いて「運」で決める、一時金または手当の支給制度 |
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指定の始業時間より早く出社した社員への「特別手当」制度 |
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事業の課題や解決策の提案を行う「ビジネスコンテスト」と、経営者や役員との「ランチミーティング」を組み合わせた制度 |
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社員の好きな方法で語学を学習し、その費用を補助する制度 |
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社販として、自社の通販サイトのポイントを付与し、社員が好きなものを買うことができる制度 |
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「面白さ」とは別に、基本的な福利厚生について詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
福利厚生とは?定義やメリットを経営者向けにわかりやすく解説
2.面白い福利厚生制度を整えるには
会社の個性を引出した独自性のある「面白い」福利厚生制度を整えるには、次の3ステップで行います。
1)会社理念に沿いつつ社員のニーズがある福利厚生を考える
2)財源を確保して運用管理の体制を決める
3)独自の福利厚生制度を名づけて社内外に情報発信する
1) 会社理念に沿いつつ社員のニーズがある福利厚生を考える
まず、社員のニーズがある福利厚生制度が何かを考えます。
社員が働きやすくなるにはどうすればよいか、楽しく仕事できるようにするにはどうすればよいか、社員同士の交流を促進するにはどういう工夫が必要かなど、「福利厚生という形で会社が社員にどうなってほしいか」というテーマで、ブレインストーミング(自由討論)やアイデア出しを行います。
会社の広報の役割も重視したいのであれば、会社を知らない人からどんな会社風土であると思われたいかを追求し、アイデアを精査します。
会社理念に沿う福利厚生の内容である方が、会社の独自性を出しやすくなります。
既存の福利厚生を複数組み合わせて1セットにするなども有効です。
もし福利厚生のコンセプトから会社理念にリンクさせるのが難しそうな場合は、仕上げのネーミングで個性を出すと良いでしょう。
社員のニーズなど福利厚生のトレンドについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のトレンドは従業員個人の利益から企業を成長させる力へ
なお、既存の福利厚生を見直す場合、利用率なども加味して工夫する必要があります。
福利厚生の見直し方について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説
また、できれば、福利厚生にかかる費用を福利厚生費に計上できるよう、制度内容を工夫する必要もあります。
福利厚生費について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生費とは?定義や類語との違いから非課税要件まで解説
2) 財源を確保して運用管理の体制を決める
福利厚生の財源は会社の事業資金です。福利厚生用に予算をとり、社内の運用管理の体制を決める必要があります。
定型業務にまで福利厚生の内容や手続きなどの処理が固まったら、総務事務としてアウトソーシングすることもできますが、導入当初は内部の総務人事部門の人員に負荷がかかります。
独自の福利厚生を運用するにはコスト面が懸念になるため、外部の福利厚生サービスを部分的に使うことも同時に検討してみるとよいでしょう。
福利厚生のアウトソーシングについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生のアウトソーシングとは?市場規模と種類とメリットを解説
3) 独自の福利厚生制度を名づけて社内外に情報発信する
福利厚生の名前はユニークであればあるほど、話題性があります。
福利厚生の内容が聞いただけでイメージできるような名前をつけ、社内の社員に周知します。
福利厚生での面白い「体験の共有」は、社員同士の交流を促進させ、社員の会社への帰属意識を高める可能性もあると推察されます。
また、社員の福利厚生の体験を社外にも情報発信すれば、社外の人に会社を知ってもらうきっかけになり、会社の採用時の広報やブランディング役立ちます。
面白い福利厚生は人に話したくなるため、その会社を直接知らない人に興味関心につなげ、認知を広げることになるからです。
(執筆 株式会社SoLabo)
生23-5830,法人開拓戦略室