(※)当文書中で記載している「団体保険」とは、総合福祉団体定期保険や団体定期保険、医療保障保険(団体型)、3大疾病保障保険(団体型)の総称を示しており、保険商品によって異なる内容であれば、具体的な商品名を明記しています。なお、保険会社によって商品内容が異なる可能性がありますので、詳細は各保険会社にお問合せください。
団体保険とは、企業の役員や従業員(以下「所属員」)を加入対象とした保険です。
団体保険の最大のメリットは、なんといってもお手頃な保険料です。一般的な団体保険は、所属員数が一定規模の企業を対象としており、事務手続きの一部も企業が対応します。保険会社としてはコストを抑えながら効率的に運営できるので、その分、保険料がお手頃に設定されています。
福利厚生にはさまざまなメニューがありますが、保険料がお手頃な団体保険は、所属員の生活をダイレクトにサポートできます。直近では、中堅企業(所属員規模100~1,000名程度)にも契約いただける事務手続きも簡単な団体保険が登場しています。
「所属員が喜ぶ福利厚生を実現し、人材の採用や定着につなげたい!」
このようにお考えの経営者の方は、本記事を読んでみてください。団体保険の仕組みなどを分かりやすく紹介しています。
1.団体保険とは
1)団体保険の基本
団体保険とは、
企業の所属員を加入対象とした保険
です。例えば団体定期保険の場合、契約形態は次のようになります。
- 保険契約者:企業
- 被保険者:所属員
- 死亡保険金受取人:被保険者の遺族
2)団体保険の主な特徴
団体保険の主な特徴は以下のとおりです。詳細は保険商品によって異なるので、お付き合いのある保険会社の担当者にお問合せください。
- 保険料負担者について、企業と所属員の2種類がある
- 加入形態について、全員加入と任意加入の2種類がある
- 1年ごとに更新する定期保険が多い
- 有配当タイプ(配当金が支払われる)と無配当タイプがある。無配当タイプは配当金がないため配当金受け入れに伴う経理処理が不要である。一般的には有配当タイプの方が実質負担金(=年間保険料-配当金)が小さいことが多い
- 被保険者の「死亡」「傷害・疾病」「法定外労災補償」などを対象とするものがある
これらの保険商品を組み合わせることで、所属員に対して、
- 在職中:万一の死亡、傷害や疾病になった際の保障、法定外労災補償を給付
- 退職時:死亡退職金(弔慰金)の支給
をすることができ、福利厚生の充実が図れます。
3)団体保険の全員加入部分と任意加入部分
保険料を誰が負担するかによって、団体保険は次のように分類されます。
- 全員加入部分:原則として全所属員が加入し、保険料は企業が負担(企業保障型)
- 任意加入部分:所属員は任意に加入し、保険料は所属員が負担(自助努力型)
例えば、総合福祉団体定期保険は、企業が保険料を負担する企業保障型の制度です。一方で、一般的な団体定期保険は、所属員が保険料を負担する自助努力型の制度です(団体種別や保険種類等によっては、自助努力型の制度に加えて、企業が保険料を負担する企業保障型を併設することも可能です)。
2.団体保険のメリット
団体保険の主なメリットには、
- 企業と所属員のメリット:お手頃な保険料
- 企業と所属員のメリット:医師の診査がなくても申込みできる(告知は必要)
- 企業と所属員のメリット:税制のメリットがある
- 企業と所属員のメリット:付帯サービスを利用できる場合がある
- 所属員のメリット:商品により家族(配偶者やこども)も加入できる
があります。
1)企業と所属員のメリット:お手頃な保険料
団体保険は加入申込みや事務手続きなどを効率化し、コストを軽減することで、お手頃な保険料を実現します。なお、所属員が任意に加入する部分については、保険料を参考に、保障額のプランを選択することができます。
2)企業と所属員のメリット:医師の診査がなくても申込みできる
団体保険では、医師の診査ではなく、簡易な告知による申込手続きです。
※健康状態等によっては、加入できない場合があります。
3)企業と所属員のメリット:税制のメリットがある
企業が負担する保険料は、原則としてその全額を損金に算入できます(法人税基本通達9-3-5、同9-3-6の2)。一方、所属員が負担する保険料は、生命保険料控除の対象となります(保険の種類によって控除枠は異なります。)。
なお、この情報は2023年10月現在の税制・関係法令等に基づく税務の取扱い等について記載しており、今後、税務の取扱い等が変わる場合があります。
4)企業と所属員のメリット:付帯サービスを利用できる場合がある
付帯サービスが利用できる団体保険もあります。付帯サービス例には、
- 所属員が健康に関して相談できる
- 割引価格でホテルに宿泊したり食事したりできる
- 経営者や人事・総務担当者が所属員の健康などに関する課題を相談できる
などがあります。これらも福利厚生の充実につながります。
5)所属員のメリット:商品により家族(配偶者やこども)も加入できる
自助努力型商品によっては、所属員の家族(配偶者やこども)も加入できます。家族(配偶者やこども)もお手頃な保険料で加入できるため、所属員は家族全体で「保障の充実と支出の抑制」の実現を図ることができます。また、所属員が負担する部分の保険料を給与控除とする場合、所属員は振込の手間が省け、家計の管理もしやすくなるでしょう。
3.団体保険の留意点
一般的に、団体保険を導入できるのは所属員数が一定規模以上の企業です。中堅・中小企業の経営者の皆さまの中で、団体保険と似た提案を受けたことがあるかもしれませんが、それは「団体扱」かもしれません。団体扱は団体保険とは異なる仕組みで、比較的規模が小さい企業も対象となります。
団体扱については、「団体保険と団体扱との違い」の章で説明しているので、ご興味があれば確認してみてください。
団体保険では、保険契約者である企業の労務担当者が、所属員からの照会対応や一定の事務手続きに対応したり、任意加入部分については所属員へ団体保険の加入勧奨を行います。そのため、労務担当者の人員確保が必要な場合があります。
また、総合福祉団体定期保険のように、団体保険の種類によっては企業が定める「福利厚生規程」に基づいて契約する必要があります。規程に基づいた契約の場合、被保険者や保険金額の範囲は、福利厚生規程を超えない範囲で設定する必要があります。
企業の中には福利厚生規程を整備していないケースもあるので、社内の規程を確認してみてください。福利厚生規程のひな型は生命保険会社が提供していることもあります。ただ、ひな型は一般的な内容であり、必ずしも企業の実情と合わない場合もあるので、社会保険労務士等の専門家に確認いただくことが大切です。
4.団体保険と団体扱との違い
前述した「団体保険」と「団体扱」との違いについて補足します。「団体扱」は商品ではなく、「団体保険」と名称こそ似ていますが、全くの別ものです。
「団体保険」と「団体扱」の最大の違いは保険契約者です。具体的には、
- 団体保険:保険契約者は企業
- 団体扱:保険契約者は所属員(個人)
となり、企業が契約するのか、所属員が契約するのかで分かれます。
「団体扱」の場合、企業は所属員からの保険料徴収と生命保険会社への支払い等を行い、所属員への募集は生命保険会社が行います。生命保険会社としては企業内の所属員を対象に効率的に運営できるので、保険料は「団体保険」ほどではないですが、安く抑えられるケースがあります(契約者(法人契約の場合は、被保険者)数が20名以上の場合。一部商品を除く。)。
また、「団体扱」の場合、契約は生命保険会社と所属員との間で交わすため、退職後も契約を続けることができます(保険料が変わる場合があります)。
このように「団体保険」と「団体扱」は、呼び方は似ているものの、全く別の仕組みですので、福利厚生として検討する際は、その点をきちんと把握しておく必要があります。
いかがでしょう。団体保険の特徴やメリット、留意点がお分かりいただけたと思います。経営者から見ると、団体保険は「福利厚生」の有力な選択肢となりますが、この他にも検討したい福利厚生のメニューがたくさんあります。福利厚生については、次の記事で詳しく紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。独自のアンケートで分かった「所属員が喜ぶ福利厚生」についても紹介しています。
従業員が喜ぶ福利厚生とは? 種類やメリット、上手なPR方法などを分かりやすく解説!なお、日本生命では様々な種類の団体保険をご提供しています。例えば、団体定期保険の一つとして、「みんなの団体定期保険(新無配当扱特約付団体定期保険)」という商品があります。従来の団体定期保険は「企業規模が大きくないと契約できない」「事務手続きなどの負担がある」などのデメリットがありますが、「みんなの団体定期保険」の場合、
- 所属員数が少ない企業でも契約できる(一定の要件があります。)
- 事務手続きは専用のWEBシステムを利用できる
といった特徴があります。興味がある方や詳細な商品内容を知りたい方は、こちらの資料をご参照ください。
以上
(執筆 日本情報マート)
日本生命保険相互会社 法人営業企画G 法人営業開発室
日本2023般-211(2023.12.4)