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リモートワークを福利厚生に導入する方法と在宅勤務支援策を解説

経営課題事例

2023-03-20

「福利厚生のリモートワーク」をテーマに、リモートワーク制度を福利厚生に導入する方法と、社員が在宅勤務するうえでの福利厚生制度や施策のアイデアについて、経営者向けに解説します。

目次

2020年のパンデミック以後、福利厚生制度として、インターネット通信によって社員を本来の勤務地とは異なる場所で勤務できるようにする「リモートワーク」を導入する企業は珍しくなくなりました。

本記事では、福利厚生としてリモートワーク制度の導入が求められる背景から、リモートワークの基礎知識や、制度導入時に検討すべき点まで解説します。

また、リモートワークの中でも利用が多いと推定される、社員を自宅で勤務させる「在宅勤務」を支援するアイデアもご紹介します。

1.福利厚生にリモートワーク制度の導入が求められる背景

2020年4月に緊急事態宣言が発令された後、大企業は8割、中小企業でも5割がリモートワークやテレワーク、在宅勤務を導入したとされます。
参照:令和3年版 情報通信白書 「図表2-3-4-1 企業のテレワーク実施率」|総務省

今後も、非常事態に陥った場合、出勤(出社)する者を制限しても企業活動が継続できる仕組みが求められており、リモートワークは単に社員に対する福利厚生制度というだけでなく、事業継続計画(BCP)の一要素とみなされる背景があります。

また、経済産業省の要請により、リモートワークの活用等による出勤者数の削減の実施状況について、企業法人が自ら積極的に公表する取組が継続的に求められています。
参照:出勤者数の削減に関する実施状況の公表・登録|経済産業省

経済産業省は、数々の事業者向けの補助金の主管であり、IT先端技術を取入れた「業務のデジタル化」から、ビジネスモデルを変える「デジタル革新」を起こすDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も行っています。

今後、福利厚生のリモートワーク制度の有無が、企業の事業継続や成長戦略に影響するといっても過言ではないでしょう。

そもそもリモートワーク制度とは?

リモートワーク制度とは、職場から離れた場所でも、インターネット通信で社員が業務を行えるようにする福利厚生制度です。

Remote(遠隔の)とWork(働く)の複合語で、英語圏でも通用する表現です。

理論上、リモートワークはインターネット通信が行える場所ならどこでも行えますが、福利厚生制度としては社員の自宅、通常の職場とは別の拠点のサテライトオフィス、指定のシェアオフィスやコワーキングスペースなど「リモートワークで働ける場所」を制限する運用が一般的です。

なお、リモートワークの同義語に「テレワーク」がありますが、こちらはTele(遠隔の)とWork(働く)から成る和製英語で、こちらも同じ内容の福利厚生制度を指します。

他にも、リモートワーク制度と同じ使われ方をされる福利厚生として「在宅勤務制度」がありますが、こちらは「社員の自宅のみ」に働く場所を限定したリモートワーク制度を指すのが一般的です。

一般的に、IT関連などの情報通信やwebサービスの業界や業種の場合、リモートワーク制度との親和性が高いと言われます。

一方で「その場に社員がいないと仕事にならない」ような建設業や宿泊業、運輸業、飲食サービス業界、医療、介護、福祉、教育分野はリモートワーク制度の実施率が低く、導入して仕事内容を適応させるのが難しいと言われます。
参照:令和3年版 情報通信白書 「図表2-3-4-3 業種別・テレワーク実施率」|総務省

「リモートワーク制度の利用率が高い=いい会社」になる?

福利厚生の充実度は「大手企業だから福利厚生が充実している」とか、「特定の福利厚生制度があれば『福利厚生のいい会社』」とか、企業規模や中小企業向けの福利厚生の助成金などもあって、一概には傾向が言えない事情があります。

「福利厚生が良い会社」については次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生が良い会社とは?特徴や制度を解説

一方、福利厚生の充実度に対するわかりやすい指標として「リモートワーク制度があり、どれだけ利用されているか」で判断される可能性はあります。

経済産業省の要請を受けた各企業が、リモートワーク制度の利用実績がわかる、出勤者数の公表を続けた場合、「リモートワーク制度がよく使われている」企業かどうかが一目瞭然です。

福利厚生の情報が開示される透明性の高い社風であること、社会情勢にあった福利厚生を提供しており、福利厚生が充実している会社として、評価されるようになる可能性は高いと考えられます。

また、リモートワークを行えるということは、業務のデジタル化が進んでおり、DXを想定した事業成長度も高いことが予想されます。

競合他社と比較した場合に「リモートワーク制度の利用率が高い=良い会社」という図式で、求職者や出資者に判断されるようになると推定できます。

2.福利厚生にリモートワーク制度を導入するには?

福利厚生にリモートワーク制度を導入するには、次の手順で検討を進めます。

  • リモートワーク制度の導入メリット・デメリットを比較検討する
  • 企業理念や情報セキュリティを考慮して制度内容を検討する
  • リモートワーク制度と同時に既存の福利厚生制度を見直す
  • リモートワーク制度と同時に新規の福利厚生も導入検討する
  • リモートワーク制度の運用に必要な機材や担当人員を手配する

なお、リモートワークに関する費用が経費になるかどうかは、国税庁の指針を参考にして検討しましょう。
参照:在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁

リモートワーク制度の導入メリット・デメリットを比較検討する

リモートワーク制度の導入に際し、メリットとデメリットを比較し、検討する必要があります。

リモートワーク制度を導入するメリットは、次のとおりです。

  • 働く場所を選べることで従業員の働きやすさが向上する
  • 事業戦略を見直し、災害時でも事業継続がしやすくなる(例:リモートワークを前提にオフィス再編を伴うオフィス賃貸費用の見直し、通勤交通費をリモートワーク手当に変更など)
  • 業務のデジタル化を促進することでDXに対応した事業戦略に転換しやすくなる

上のように一般的に挙げられるリモートワークのメリットは、リモートワークを全社的に導入すれば見込めますが、一部門だけなど限定的な制度導入の場合には見込めないものと考えられます。

社員間の不平等感を抑え、事業面での効果を生むためにも、リモートワーク制度の導入は全社展開を目指すのがよいでしょう。

リモートワーク制度の導入するデメリットは、次のとおりです。

  • サイバー攻撃や情報漏えいなどの情報セキュリティ事件・事故のリスクが制度導入前よりも高くなり、事件事故の発生時には会社の社会的信用を傷つける可能性がある
  • ネットワークの不通や遅延がそのまま、事業経営に影響する
  • 社員個人に対して、必要なIT機器関連の費用を個々に割り当てる必要があるため、IT関連のコストや管理工数が増える

リモートワークのデメリットにまず一番に挙げられる情報セキュリティ事故は、情報を読み解いて適切に受信・発信できる基礎的な能力「情報リテラシー」が低い社員がいると起こりやすい傾向があります。

全社的に情報セキュリティに関する教育はもちろん、事件事故を起こりにくくするガイドラインを作り、社内ルールを遵守させる制度運用を行うことが重要です。

IT関連の器具備品を購入した場合、それぞれの耐用年数に応じた減価償却が必要な資産に当たるため、費用の他に管理工数がかかります。
参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

管理工数の削減や経理処理を鑑み、リモートワークに必要なIT関連機器はレンタル・リースの活用を検討してもよいでしょう。

企業理念や情報セキュリティを考慮して制度内容を検討する

リモートワークを行う場合に働く場所は社員の自宅を想定し、在宅勤務を想定するのが一般的です。

ただし、次のようなケースでは、別途、企業の拠点としてサテライトオフィスを設けることも視野に入れる必要があります。

  • 企業理念や事業方針により、通信と情報セキュリティを重視せざるを得ないケース
  • 自宅の通信環境が不安定で、ネットワークのサービス品質の問題をかかえる社員がいるケース
  • 在宅勤務だと、保育園などの入園の優先度を決める「選考指数(点数)」が低くなり、託児を希望どおりできない自治体に住む社員がいるケース

リモートワーク用に各所に拠点を設けるのは設置と運営の費用がかかり、現実的ではないため、他企業と共同で利用できるシェアオフィスや、コワーキングスペースの一部に、区画を分けた企業専用スペースを作るなどの対応が一般的です。

リモートワーク制度と同時に既存の福利厚生制度を見直す

既存の福利厚生制度を取りやめることで、リモートワーク制度のメリットを最大化できる可能性があるため、リモートワーク制度と同時に、既存の福利厚生制度を見直しましょう。

例えば、オフィス機能を集約し、賃貸料を安く上げるため、都心から離れた地方に移転する企業も珍しくありません。

令和3年(2021年)の調査では、有効回答680社の中で18.4%(125社)が拠点の地方移転・分散に対応済であり、7.8%(53社)が移転・分散の検討中である旨が示されています。
参照:地方移転に関する動向調査結果【詳細版】令和3年4月(PDF)拠点の移転検討状況|経済産業省関東経済産業局

オフィス機能の集約と移転に伴い、オフィス内で提供していた福利厚生制度を取りやめるケースもあると推定されます。

その他、福利厚生の見直しについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説

リモートワーク制度と同時に新規の福利厚生も導入検討する

一般的には、自宅でのリモートワークを行なった場合、冷暖房や照明などの電気代や通信費を圧迫することになり、従業員満足度に影響する可能性があるため、リモートワーク手当を導入検討します。

全社的なリモートワークでの業務遂行を主流とする企業では、自宅から拠点への通勤交通費の支給を取りやめ、リモートワーク手当に切替える傾向があります。

その他、新規の福利厚生制度として在宅勤務を支援するアイデアについては、本記事の後半で解説します。

リモートワーク制度の運用に必要な機材や担当人員を手配する

リモートワークには、最低でも一人一台のパソコンとツールやソフトウェア、ネットワーク環境と作業場所を用意する必要があります。

作業場所を社員自宅と想定した場合、最低限、机や椅子も必要です。仕事専用部屋を確保できないなど環境や事情によっては間仕切りやカーテン、長時間快適に働くための空気清浄機などの備品の要望も出てくるでしょう。

業務内容によっては、ディスプレイモニターを別に支給し、ノートパソコンにつないで大きな画面で表示しないと仕事にならない社員もいるでしょう。

また、ネットワーク設備を社員の自宅に敷設していない場合、Wi-Fi機器などを提供する必要がありますが、社用スマートフォンを支給している場合、テザリングで別途回線契約なしに対応させることもできるため、今ある機材や端末の状況を把握しながら柔軟に検討する必要があります。

繰り返しの説明になりますが、パソコンや机、椅子など、業務で使用するものを購入すると「資産」になり、製品ごとに設定された耐用年数に応じた減価償却が必要です。
参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
参照:主な減価償却資産の耐用年数表(PDF)|国税庁

例えば、パソコンは4年の耐用年数となり、管理が煩雑になるため、まとめてレンタル・リースを検討するのも有効です。

なお、社内でリモートワーク制度に必要な機材や情報端末の調達、サーバーなど業務情報を安全に通信でやりとりする運用について専門的な判断ができる人員が手配できない場合、外部委託を検討する必要があります。

3.社員の在宅勤務を支援する福利厚生制度や施策のアイデア

社員の在宅勤務を支援する福利厚生制度や施策のアイデアを見ていきましょう。

わざわざリモートワークの中でも、在宅勤務に限定して紹介する理由は、社員の自宅は働く環境として適していない可能性が高いからです。

リモートワークを行う場所には、社員の自宅の他に、企業の他の拠点(サテライトオフィス)、シェアオフィスやコワーキングスペースがありますが、企業や運営会社のような管理者によって「働く場所」として整っている場合は、それほど支援の必要がありません。

もちろん、リモートワークの浸透によって、家づくりにも変化があり、社員によっては書斎のような専用の仕事部屋を作ったケースもあるとは考えられますが、基本的に「在宅勤務支援が必要」という前提で、福利厚生制度や施策を用意しておいた方がよいでしょう。

例えば、次のような福利厚生制度や施策によって在宅勤務支援になります。

  • 在宅勤務手当
  • ノートパソコンやモニターなどIT機器のレンタル・リース
  • 宅配によるランチサポート
  • 運動習慣を身につけさせる健康サポート

在宅勤務手当

在宅勤務手当を電気代や通信費の補助として月に一律3,000円~5,000円程度支給するのは、一般的な在宅勤務支援に当たります。

リモートワーク手当、テレワーク手当として表現されることもあります。

なお、全員に一律支給ではなく、在宅勤務にかかった電気代や通信費などの必要経費を算出し、精算させると経費に計上できます。
参照:在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係):5 業務使用部分の精算方法|国税庁

ノートパソコンやモニターなどIT機器のレンタル・リース

ノートパソコンやディスプレイモニターなど、リモートワークで必要なIT機器は会社で購入して社員に貸与するより、リース・レンタルする方が経費に計上しやすく、社内の資産管理、保管や発送の手間が省けます。

在宅勤務の場合に必要な業務用の机や椅子などの資産に当たる備品も同様です。

なお、社内ネットワークにつなぐ際のセキュリティを考えるのであれば、フリーWi-Fiにつながないようにルールの徹底を促すだけでなく、会社としてWi-Fi機器を貸与するか、テザリングが行える社用スマートフォンなどの情報端末を貸与するのが一般的です。

宅配によるランチサポート

職場であれば社食や近くの飲食店で外食することができますが、社員の自宅の周辺環境によっては、すぐにランチが摂れない可能性があります。

自炊が好きなら問題ないですが、今まで気に留めずにいたランチを意識しなくてはいけない状態は、社員満足度が下がるリスクが考えられます。

リモートワーク対応のランチサポートとして、社員の自宅に宅配されるランチサービスの活用も検討しましょう。

また、他の社員とのコミュニケーション不足を埋め合わせるため、定期的にオンラインでランチミーティングを開催し、ランチイベントとして同じ宅配されたランチを食べるというのも有効な手です。

なお、福利厚生におけるランチについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生でランチをサポートするなら?食事支給と費用補助を解説

運動習慣を身につけさせる健康サポート

リモートワークは座りっぱなしの生活になる傾向があるため、ジムやスポーツクラブの費用補助や、オンラインでの運動指導プログラムの提供など、社員が運動を習慣づけられるような健康サポートを行います。

なお、福利厚生での運動サポートについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生で社員の運動不足解消をサポートするには?取組事例を解説

また、ミーティングなどの他の社員とのコミュニケーション機会の少ない業務に従事している社員などは、リモートワークを続けるとメンタル不調に陥る可能性があります。

オンラインでカウンセリングを受けられるようにするなど、メンタルヘルスケアの対策も必要です。

なお、福利厚生におけるメンタルヘルスケアについては次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生でメンタルヘルスケアできる?基本から施策や制度例まで解説

(執筆 株式会社SoLabo)

生22-6462,法人開拓戦略室

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