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人事評価制度とは?種類と活用ポイントなど基礎知識を解説

経営課題事例

2024-05-09

「人事評価制度と種類」をテーマに、人事評価制度の種類、評価軸の種類、作り方や活用ポイントについて経営者向けに解説します。

目次

人事評価制度とは何か、ご存知でしょうか。人事評価制度と人事制度は同じ意味として使われる文脈もありますが、厳密には定義が異なります。

また、人事評価制度には種類があり、「ミッショングレード制度」や「ジョブグレード制度」など評価する対象の定義が異なるケースや、「360度評価制度」のように評価する者の設定が特殊なケースなど、それぞれに細かな差異があります。

本記事では、人事評価制度の基本として定義や人事制度との違いを解説し、人事評価制度の種類、人事評価制度を作り活用するポイントについてご紹介します。

1.人事評価制度は会社が社員を評価する仕組み

人事評価制度とは、会社などの組織の設定した評価基準をもとに、個々の社員の働きぶりや仕事の成果、能力、スキルなどを評価する仕組みのことです。

会社の人事評価制度は複数の制度と組み合わせて運営される傾向にあります。

人事評価制度の他に、社員の序列をつける「等級制度」と、給与・手当・賞与・退職金などの待遇に反映する「報酬制度(賃金制度)」が組み合わさった制度設計になることが一般的です。

そのため、文脈によっては人事評価制度と人事制度を同じ意味で使用するケースが見られます。

人事制度との違い

人事評価制度は、人事制度の構成要素のひとつです。

人事制度とは、会社のビジョンの実現や、社員のロイヤルティ(信頼性や愛着)の向上のため、会社として一貫性した基準を持つ人事管理の仕組みそのものを指します。

人事制度の主な例としては、等級制度・人事評価制度・報酬制度がありますが、3つをまとめて1つの制度として扱うケースが見られます。

他には、等級制度・人事評価制度・報酬制度とは別に昇給制度を設けて4構成と定義するケースや、教育制度や多様な働き方を実現する福利厚生制度の5構成と定義するケースも見られます。

2.人事評価制度の種類

人事評価制度の種類は次のとおりです。

【主な人事評価制度の種類】

制度名

概要

メリットとデメリット

目標管理制度(OKR)

業績に基づいて社員の評価を行う。

「目標と主要な結果」(Objectives and Key Results)から頭文字をとって「OKR」とも呼ばれる。

  • 数値化の難しい目標に対しても有効で、会社の組織としてのモチベーション向上につなげやすい。
  • 数値化できない目標を扱う場合、評価基準の設定が難しく、社員間での成果の比較がしにくい。

目標管理制度(MBO)

従来からある目標管理制度。重要目標達成指標として、売上などを数値目標として表現する。

「目標によるマネジメント」(Management by Objectives)から頭文字をとって「MBO」とも呼ばれる。

  • 数値化された成果がわかりやすく、社員の個々人のモチベーション向上につなげやすい。
  • 数値化できない目標に対して、有効な制度と言い難い。

役割評価制度(ミッショングレード制度)

社員に任せる業務上の役割(ミッション)への貢献度を評価する。

上の条件の人事評価制度と等級(グレード)の制度をひとまとめにした場合、ミッショングレード制度と呼ぶ。

  • 職種にかかわらず、個人の持つ「役割を果たす能力」で給与が決まるため、能力主義・成果主義を実現しやすい。
  • 社員の個々の能力だけでなく、職務とは別に会社内に存在する「役割」を適切に把握しないと成り立たないため、高精度な人材管理が求められる。

職務評価制度(ジョブグレード制度)

社員が担当する職務(ジョブ)に難易度を設定した上で仕事ぶりを評価する。

上の条件の人事評価制度と等級(グレード)の制度をひとまとめにした場合、ジョブグレード制度と呼ぶ。

  • 職務内容ごとに難易度を明確にすることで、効率的なジョブローテーションや人材開発につなげやすい。
  • 職務の難易度設定を適切に行い、職種間の格差がないようにしないと、不公平感が出る。

能力評価制度

社員が業務で発揮する能力やスキルを評価する。

  • 社員に能力やスキルの向上を促せる。
  • 成果につながる能力やスキルを高く評価する制度設計にしないと、公平感を保つのが難しい。

バリュー評価制度(行動評価制度)

会社の経営理念・目標の実現に向けた行動基準に沿って、社員が具体的な行動を起こしたかの実践度をはかる。

  • 会社の経営理念・目標を社員に浸透させやすい。
  • 行動への評価基準を明確にするのが難しい。

コンピテンシー評価制度

成果を出す社員に共通した行動特性に基づく評価を行う。

  • 評価のタイミングで成果になってなくても、成果につながる行動をしていたことを評価できるため、社員に積極的な行動を促せる。
  • 「社員に共通した行動特性」を明確にするのが難しい。

360度評価(多面評価)

社員の直属の上司だけでなく、部下や同僚など複数の社員の視点を含めた多面的な評価を行う。

  • 直属の上司以外からの多面性のある評価によって、人事評価が客観性と公平性のあるものになりやすい。
  • 幹部社員以外にも人事評価に際しての研修や教育を行わないと、評価する側の主観や心理的傾向からの偏向評価が生まれやすい。

年功評価制度

社員の長年にわたる功労や功績を評価する。

  • 社員の定着率を高めやすく、長期的な人材育成につなげやすい。
  • 能力主義・成果主義を実現しづらく、入社年数の短い若手社員のモチベーションが低下しやすい。

ノーレイティング

等級制度を廃止し、人事評価制度と報酬制度のみで構成される。

社員の報酬の裁量は直属の上司に一任される。

  • 等級に関連する判断材料を考慮する必要なく、その時に上司が行った評価をそのまま報酬に反映できる。
  • 評価を行う上司と社員が対話する場を多く設定しないと、上司の心理的傾向に左右され、偏向評価を生む可能性が高い。

なお、2001年から2018年の調査によると「目標管理制度」や「コンピテンシー評価制度」は継続的に実施され、「360度評価制度」は増加の傾向にあります。

また、一般社員に対して人事考課結果の公開を行う会社も増加する傾向にあり、時勢を考慮するのであれば、社員に対してオープンマインドに人事評価制度を運営する必要があると言えるでしょう。
参照:民間における人事評価制度の目的・役割の変遷(PDF)|内閣官房

3.人事評価制度を作るには?

人事評価制度を作る手順は、次のとおりです。

  • 自社における人事面の課題を把握する
  • 人事評価制度の導入目的を定める
  • 等級制度や報酬制度など他の人事制度との関わりを決める
  • 人事評価制度の評価項目・評価基準を決める
  • 人事評価の結果についての待遇への反映方法を規定する
  • 人事評価を行う幹部社員を教育する
  • 一般社員に周知し、運用を開始する
  • 導入した制度の振返りを定期的に行う

人事評価制度の作り方の各手順について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
人事評価制度の作り方を解説「導入目的」と「公平感」が成否をわける

人事評価制度を形作る核になるのは、会社として社員に期待する人材像や、会社の将来のビジョンなどの「思い」です。

最終的に「人事評価制度の目的」や「制度導入の経緯」などを含め、マニュアル化して全社員が同じように人事評価を受けられる状態にまで仕上げる必要がありますが、まずは「何のために人事評価を行うのか」をよく検討した上でスタートする必要があります。

社員が人事評価について記入するシートや、評価をする側の上司向けの面談時の留意点など、細かな部分は担当に任せることになりますが、経営者として人事評価をつくる作る目的をはっきりさせてスタートしなければ、現場で「無駄な制度だ」と思われる可能性があるので、注意が必要です。

なお、人事評価制度を適切に運営するポイントは次のとおりです。

  • 人事評価基準を明確にし、社員に説明する
  • 人事評価を行う者に対し、責任の重さを自覚させる
  • 人事評価基準を遵守し、公正な評価を行わせる

幹部社員だけでなく、一般社員に評価基準を理解して取組ませなければ、人事評価制度のメリットを最大限に引出せません。

また、評価を行う幹部社員には、社員への評価が社員の給与や昇給以上に、社員個人の人生と会社の未来を左右する旨を認識させる必要があります。

何より、人事評価制度を運営する際の難しさは、人間が人間を評価する以上は「不公平感」がなかなか拭えないことです。

いかにマニュアルを整えてシステマチックに人事評価制度を運営していたとしても、人事評価をする者の心理的傾向による偏向評価「人事評価エラー」が発生するのは避けられません。

人事評価エラーを起こした場合、どのように対処するかについても制度設計しておきましょう。

人事評価制度のメリット・デメリットと、最大の問題点「人事評価エラー」について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
人事評価制度のメリットとデメリットから見る問題点と見直しポイント

4.人事評価制度を活用するには?

ただ報酬を決めるためだけの人事評価制度にならないように活用するには、社員の悩みや成長をサポートできる制度も必要です。

人事評価制度を活用するには、次のポイントを押さえましょう。

  • 従業員満足度調査を定期的に実施する
  • 1on1でコーチングをする
  • メンター制度でメンタリングをする
  • AI分析ツールなど活用して「評価する側」の社員をサポートする
  • 社員のキャリア形成を支援する制度を導入する

従業員満足度調査を定期的に実施する

従業員満足度調査とは、社員に対してアンケートを実施し、会社に対する評価をはかることを指し、従業員満足度の向上によって顧客満足度や業績の向上が見込めます。

従業員満足度調査の中で、アンケートによる質問や面談を行うことで、人事評価制度の改善点を洗い出せるでしょう。

なお、従業員満足度と顧客満足度の相関関係について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度と顧客満足度の相関関係とは?

1on1でコーチングをする

1on1(ワンオンワン)制度は、人事面談とは別に、社員と直属の上司と部下が1対1で定期的に対話の場を設ける制度です。

対話を繰り返すことで、業務中は気づきにくい部下が抱える悩みや将来の展望などを理解し、部下の成長をサポートするコーチングが行えます。

メンター制度でメンタリングをする

メンター制度は、新入社員や中途社員を対象に、相談しやすい年齢の近い社員(メンター)が担当について指導や助言する制度です。

キャリア形成や職場の人間関係の悩みなど、直属の上司や同僚に話しづらい部分をフォローするメンタリングが行えます。

AI分析ツールなど活用して「評価する側」の社員をサポートする

人事評価する側の幹部社員の負担は大きいため、可能であれば人事評価を専門とするAI分析ツールを活用しましょう。

個々の社員に関する傾向や面談時の留意点などの補助となる情報を出せると、人事評価の負担を減らすことができます。

社員のキャリア形成を支援する制度を導入する

社内で新事業を行える「社内ベンチャー制度」や、会社の本業とは別に事業を行うことを認める「副業制度」など、社員の能力を向上させる機会を提供する福利厚生制度の導入も、人事評価制度の活用として有効です。

ただし、どちらも幹部社員に負荷をかける可能性はあるため、導入に際しては会社としての労務管理をどのように行っていくかの見直しが求められます。

副業における労務管理について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
副業や兼業を認めると労務管理はどうなる?ガイドラインをもとに解説

(執筆 株式会社SoLabo)

生24-1411,法人開拓戦略室

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