人事評価制度を行う上でのメリットとデメリットはご存知でしょうか。
人事評価制度は仕組みによっては、社員に「めんどうくさい」・「意味ない」など検索候補にあがるほどの運営上の問題点を抱える可能性があります。
本記事では、人事評価制度を行うメリット・デメリットから人事評価制度の最大の問題点となる人事評価エラー、人事評価制度の見直しポイントまでご紹介します。
1.人事評価制度のメリットとデメリット
会社が社員を評価する仕組み「人事評価制度」のメリットとデメリットは次のとおりです。
人事評価制度を行うメリット |
人事評価制度を行うデメリット |
社員の仕事のモチベーションを向上させる |
人事評価が不公平になる可能性がある |
人材育成を促進させる |
人事評価のための時間を使うために社員の負担になる |
人材配置を最適化させて会社の業績を向上させる |
人事評価制度を悪用される可能性がある |
人事評価制度により、会社が社員に期待することを目標として設定し、社員の働きぶりを評価することにより、社員の仕事のモチベーションを向上させます。
これは教育心理学における「ピグマリオン効果」と呼ばれる心理作用に裏付けされる傾向であり、他者からの期待を受けると、その期待に沿った成果を出すことができます。(1968, Rosenthal,R. & Jacobson,L. "Pygmalion in the classroom")
人事評価制度の中で、社員自身の成長につながる目標を設定する仕組みがあれば、社員の業務上あるいは個人の成長を促すことにつながります。
また、人事評価制度は、会社内の人材を把握し、適切な場所に配置する「適材適所」を実現しやすい仕組みであるため、人材配置を最適化させて会社の業績を向上させることもできます。
一方、人事評価制度の仕組みによっては不公平になり、逆に社員の仕事のモチベーションを下げる可能性がある点は留意する必要があります。人事評価制度の公平性を担保するためには、評価基準を明確にするだけでなく、評価する社員を複数人設定する、人事評価の結果を公開するなどの対策が必要でしょう。
また、制度の仕組みに問題がなくとも、人事評価のための時間を使うために社員の負担になるだけでなく、評価結果の改ざんなど人事評価制度の悪用が起こる可能性もあります。
2.人事評価制度の問題点「人事評価エラー」
人事評価制度は社員が「めんどうくさい」や「意味ない」といったネガティブなイメージを持っている場合もあり、手放しで歓迎されるものではありません。
前の項目で人事評価制度を行うデメリットを複数あげていますが、最大の問題点は「人事評価に伴う不公平感」です。
人間が人間を評価する以上、いかに評価基準を明確にしてマニュアルを整えてシステマチックに人事評価制度を運営できていたとしても、評価を受けた社員が不満を感じる「人事評価エラー」が発生するのは避けられないことです。
【人事評価エラーの種類】
種類 |
概要 |
具体例 |
ハロー効果 |
評価対象の社員が持つ特徴に引っ張られ、他の評価項目の評価が影響を受けること。 |
6段階評価で特定の評価が6だった社員について、他の項目も影響されて6に揃えてしまう。 |
中心化傾向 |
社員の能力や業績の優劣に関わらず、評価が中間値に集中する傾向。 |
実際の成果に関わらず、どの社員も6段階評価の中でほとんどの項目を4と評価する。 |
論理誤差 |
社員の能力や業績を確認せず、評価する側の憶測に基づいて行う評価や傾向。 |
評価対象の社員の働きぶりを見ず、卒業大学から能力を予測して評価に反映する。 |
近隣誤差 |
評価時点に近い期間の出来事を重要視して行う評価や傾向。 |
評価期間が終わる時期の重大インシデントが、明示する評価基準の中でも重要な評価基準として扱われる。 |
対比誤差 |
評価する側が持つ能力を基準にして行う評価や傾向。 |
評価する側の専門分野の評価は厳しく、専門外の分野には評価が甘くなる。 |
寛大化傾向 |
「評価する側が評価対象の社員と親しい」などの評価基準外の要因により、評価が甘くなる傾向。 |
ひいきの部下を実力以上に高く評価する。 |
正常性バイアス |
異常な事態に直面していながら「問題ない」と考えてしまう心理状態や傾向。 |
優秀な業績をあげていた社員が急に人事評価を落としたが、「優秀な人だから」と評価を下げずに対応する。 |
類似性バイアス |
自分と似ている特性の者を高く評価する心理状態や傾向。 |
卒業大学が同じ部下を実力以上に高く評価する。 |
一貫性バイアス |
評価対象の社員の言動に一貫した傾向があると考えてしまう心理状態や傾向。 |
あまり優秀でない部下が、人が変わったようによい成果をあげた場合に「今回はたまたまだ」と考えて人事評価に反映しない。 |
上の表にあげた人事評価エラーを予防するため、人事評価業務を行う社員に対して人事評価に特化した研修や心理学の教育を行い、自制を促す施策が一般的に行われます。
社員から信頼される人事評価制度にするために、様々なケースにおいて「中立な見方ができる評価者」を育成するようにしましょう。
3.人事評価制度の見直しポイント
人事評価制度の見直しポイントは次のとおりです。
- 人事評価の労力を減らす
- 人事評価の公平感を担保する
- 社員の不満点を調査して改善する
人事評価の労力を減らす
人事評価業務に従事する社員の負担は大きいものです。
最低でも、通常の業務と並行して人事評価業務が行えるような業務の調整を行い、評価基準にあわせて作った人事評価システムで、人事評価の負担を軽減させる必要はあるでしょう。
また、可能であれば人事評価に関するAI分析ツールなどを活用し、評価する社員が分析しなくとも、個々の社員に関する傾向や面談時に留意すべき点などの人事評価をサポートできる情報を出せると、人事評価エラーを減らすことができるでしょう。
あるいは、会社としてあえて人事評価制度そのものを抜本的に見直すのも、一つの手です。
例えば、人事評価制度の核にある等級制度を廃止し、上司と部下が対話する場を多く設定する人事評価制度「ノーレイティング」に切替える会社も出てきています。
その他、人事評価制度の種類について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
人事評価制度とは?種類と活用ポイントなど基礎知識を解説
人事評価の公平感を担保する
人事評価エラーの部分でも解説したとおり、人事評価制度の公平感は「人事評価を行う幹部社員への教育が要」と言っても過言ではありません。
人事評価を行う幹部社員への教育内容や方法を見直し、人事評価制度の目的、導入にあたっての背景について、会社のビジョンも含めて確実に共有しましょう。
なお、会社のビジョンを社員に共有する行動は、従業員満足度を向上させて、結果的に顧客満足度や業績も向上させる効果も期待できるため、幹部社員だけでなく一般社員に対しても定期的に行う方がよいでしょう。
従業員満足度と顧客満足度の関係について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度と顧客満足度の相関関係とは?
社員の不満点を調査して改善する
人事評価制度は適切に行うと、職場や仕事への愛着につながるような従業員満足度を向上させ得る取組みです。
人事評価制度の見直しを適切に行いたいのであれば、社員の不満点を調査して改善しましょう。例えば、従業員満足度調査のタイミングで、アンケート調査や面談調査を行うのが有効です。
従業員満足度のアンケート調査や面談調査について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度アンケートはどう作る?項目例を解説
(執筆 株式会社SoLabo)
生24-1409,法人開拓戦略室