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福利厚生の家賃補助の費用相場や支給する対象と条件を解説

経営課題事例

2022-09-26

「福利厚生の家賃補助」をテーマに、福利厚生の家賃補助の相場や、支給する対象と条件の基準、家賃補助の費用を福利厚生費に計上できるかについて経営者向けに解説します。

目次

福利厚生の家賃補助は、手取りが増える従業員側の人気だけでなく、企業側にも利点があることから広く支持されています。

なお、福利厚生の家賃補助には、複数の手法があり、中には経費に計上できる仕組みがあります。

他にも、福利厚生における家賃補助の費用相場や、家賃補助の対象と支給条件を決める基準の例について知り、福利厚生の家賃補助制度を考えましょう。

1.福利厚生の家賃補助とは?

福利厚生における家賃補助とは、従業員の住宅に関する費用を企業が一部、費用負担すること全般を指し、企業の判断で提供される法定外福利厚生に当ります。

福利厚生の家賃補助について、狭義では「企業が借上げた社員寮や社宅に従業員を住まわせ、従業員と企業で家賃を負担すること」を指しますが、広義では「住宅手当や引越し手当、地域手当など家に関連する費用を企業が出すこと」も家賃補助に含まれます。

家賃補助に関連する費用や手当

福利厚生の名称

備考

社員寮・社宅の借上げ

狭義での「福利厚生の家賃補助」にあたる。社員寮や社宅を企業が借上げ、家賃を一部負担するもので、企業の費用負担分は経費に計上できる。

部屋数の制限上、新入社員や単身者など給与水準の低い従業員に限定して提供される傾向がある。

住宅手当

賃貸住宅に住み、企業が定めた基準を満たした従業員に支給する。現金支給のため、経費には計上できない。

引越し手当・単身赴任手当・別居手当

引越し手当は従業員の転勤がある場合に一時金として支給し、引越しにかかる費用を支援する。

単身赴任手当・別居手当は、転勤者の中でも家族と離れて暮らす場合に支給し、2カ所の家賃負担を軽減する。

現金支給のため、経費には計上できない。

地域手当・勤務地手当

都市部などの物価の高い地域に住む従業員に対して支給し、勤務地によって生じる従業員間の支出の差を是正する。

現金支給のため、経費には計上できない。

家族手当・扶養手当・育児支援手当

従業員に扶養する家族がいる場合に支給し、扶養にかかる費用を支援する。他の家賃補助に合算するケースや、扶養家族の人数によって支給額が変動するケースがある。

現金支給のため、経費には計上できない。

住宅ローンの費用補助

従業員が持ち家を購入した場合に支給し、住宅にかかる費用負担を軽減する。

現金支給のため、経費には計上できない。

なお、厚生労働省の調査において「家賃補助や住宅手当の支給」は上から3つ目に挙げられており、従業員に必要とされる人気の高い福利厚生と言えます。

  • 人間ドック受診の補助
  • 慶弔休暇制度
  • 家賃補助や住宅手当の支給

一部抜粋して引用:令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-(本文)全体版 図表1-3-35|厚生労働省

その他、人気のある福利厚生について全容を知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。

人気の福利厚生は健康で長く働くための費用補助や休暇制度

また、福利厚生の家賃補助は、提供する企業側にも利点があります。

まず、社員寮や社宅を借上げた上での家賃補助であれば、企業が負担した費用分を福利厚生費として経費に計上できます。住宅手当などの現金支給であっても、利益を従業員に還元することで法人税の節税につながります。

他にも、家賃補助の条件の設定を工夫すれば、企業が意図する場所に従業員の住まいを集めるように促せるため、企業のBCP(事業継続計画)の対策のひとつにもなります。

なお、家賃補助は、企業が提供する福利厚生以外にも、国や地方自治体が実施する独自の支援策や、中堅所得者向けの特定優良賃貸住宅の家賃補助制度などがありますが、本記事で解説するのは「福利厚生における家賃補助」に限ります。

2.福利厚生の家賃補助の相場はどのくらい?

福利厚生の家賃補助の相場は「1万7,800円」です。

厚生労働省が2020年に実施した調査によると、企業規模でも金額に違いはあり、企業規模が大きいほど金額が大きい傾向はありますが、全体で見ると「1万7,800円」が「住宅手当など」に充てられています。

企業規模・年

住宅手当 など

令和2年調査計

¥17,800

1,000人以上

¥21,300

300~999人

¥17,000

100~299人

¥16,400

30 ~ 99人

¥14,200

*引用元の表を一部抜粋して引用

引用元:令和2年就労条件総合調査 結果の概況:第19表 諸手当の種類別支給された労働者1人平均支給額(令和元年11月分)|厚生労働省

3.家賃補助は福利厚生費に計上できる?

家賃補助として社員寮や社宅を企業が借上げ、従業員や役員に賃出し、1カ月当たり一定額の家賃以上を受け取っていれば、原則、福利厚生費に計上できます。

参照:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁

No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁

ただし、現金で支給される住宅手当など、入居者が直接契約している場合の家賃負担については課税され、経費にできません。

社員寮・社宅の借上げによる家賃補助は、従業員の給与から税金が引かれないため、特に給与水準が低く、手取りが少ない属性の従業員に必要な福利厚生と言えます。

4.家賃補助の対象や条件を決める基準の例

福利厚生における家賃補助の対象や条件を決める基準の例について解説します。

住宅手当の家賃補助について、条件を設定せず、全ての従業員に一律で支給する企業もありますが、対象者を絞る条件を設定することが一般的です。

住宅手当の支給条件を絞る具体例は、次のとおりです。

  • 対象者を単身者、かつ年齢30歳までに限る。
  • 対象者を新入社員や単身者に限定し、かつ「それまで住んでいた家から勤務地まで通勤時間の社内基準(例えば2時間)を超える」理由で新たに家を借りる場合に限る
  • 「会社の近く」の基準として、家から勤務地までの通勤30分以内などの支給条件を独自に設定し、基準を満たした従業員を対象とする。

上の支給条件の要素を抽出すると、次の4つの基準の観点が見受けられます。

  • 家賃補助の必要性が高い属性か
  • 勤務地から自宅までの距離
  • 住宅が持ち家か賃貸か
  • 住宅の世帯主かどうか

1.家賃補助の必要性が高い属性か

福利厚生における家賃補助のそもそもの目的は、従業員間の住宅にかかる支出の差の是正にあるため、家賃補助の必要性が高い属性として、他の従業員と比較して給与水準の低い新入社員や単身者は優先的に支給される傾向があります。

また、引越し手当・単身赴任手当・別居手当によって、費用負担の大きい転勤を行う従業員に対しても、優先的に支給します。

勤務地がひとつしかない中小企業の場合、勤務地や家に関する従業員間の支出差が特に表れないため、全従業員に対し、一定額を一律で支給するケースが見られます。

2.勤務地から自宅までの距離

勤務地から自宅までの距離でも、家賃補助の基準が変わる傾向が見られ、勤務地の近くに住む場合に家賃補助を行うよう、福利厚生の制度設計するのが一般的です。

企業が「勤務地の近く」に従業員を住ませる狙いは次のとおりです。

まず、従業員が勤務地の近くに賃貸を借りるとなると、企業法人はアクセスのよい立地を勤務地にする傾向があるため、自然と家賃が比較的高い地域に住むことになります。

通勤交通費と家賃の費用補助を福利厚生で提供する企業は「勤務地から従業員の自宅までの距離が遠ければ通勤交通費が多くかかり、距離が近ければ家賃が多くかかる」という相関関係のある費用を負担することになります。

また、通勤時間が長いと、通勤中の事故などによる労働災害(通勤災害)のリスク(*1)や、災害や公共交通の事故の遅延や運転休止などで従業員が勤務地に移動できず、万一の事業継続が難しくなるリスク(*2)が高くなるため、従業員が会社の近くに住むように条件付けできる「福利厚生の家賃補助」は、企業にとっての利点が大きいものと判断されます。

(*1)参照:通勤災害について|厚生労働省 東京労働局

(*2)参照:事業継続 > 知る・計画する:事業者向けのガイドライン等を参照する|内閣府 防災情報のページ

なお、社員寮・社宅の借上げでの家賃補助を行う場合、借上げる社員寮・社宅は勤務地までの通勤時間が短い立地を選ぶ傾向もあります。

3.住宅が持ち家か賃貸か

続いて、賃貸と持ち家で、福利厚生の家賃補助の考え方がどう変わるかについて解説します。

家賃は「家の借り賃」を指すため、福利厚生における家賃の費用補助は、一般的に賃貸契約を伴う住宅でないと支給対象になりません。

また、賃貸契約を伴う住宅であれば、支給対象はマンションやアパート、一戸建てなど住宅の特性は問わない傾向があります。

なお、従業員が持ち家としてマイホームを購入する場合、企業によっては別の福利厚生として住宅ローンの費用補助を行う制度を用意しているケースもあります。

4.住宅の世帯主かどうか

世帯主は、ひとつの住宅で生計を共にする者の中で、代表者として社会通念上相当と認められる者を指します。

従業員が住宅の世帯主でない次のケースは、他の支給条件を満たしていても、福利厚生の家賃の費用補助を受けられない傾向があります。

  • 従業員が親の扶養に入っており、実家から通勤しているケース(通勤時間は社内基準を満たした通勤が困難な距離ではなく、引越す計画もない)
  • 従業員が配偶者の扶養に入っており、配偶者が世帯主の住宅から通勤しているケース
  • 新入社員が一人暮らしを始めたにも関わらず、住民票を移していないケース(実家の世帯主が新居の世帯主とみなされる)
  • 従業員と法的に家族関係にない第三者とルームシェアや同棲をしており、世帯主が同居人の住宅から通勤しているケース

もし仮に従業員自身が家賃を支払っている実態があっても、従業員が住宅にかかる費用に責任を持つ立場でなければ、福利厚生における家賃の費用補助の対象にならないものと考えられます。

(執筆 株式会社SoLabo)
(監修 株式会社SoLabo 田原 広一)

生22-4185,法人開拓戦略室

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