従業員満足度調査を実施する際に重要になるのは「アンケート項目をどう作るか」という点です。
従業員満足度のアンケート項目は、労働環境や福利厚生がそれぞれ会社ごとに異なるため、独自に作ることが求められます。
従業員満足度のアンケート項目の作り方を間違うと、その回の正しい調査結果を導き出せないだけでなく、次回の従業員満足度調査との比較が正常にできず、結果の分析がきちんと行えないため、従業員満足度を活かした経営施策を打ちにくい事態となってしまいます。
本記事では、従業員満足度アンケートの項目例とともに、アンケートを作る際に気を付けるべき注意点や、アンケートをどう活かすかのポイントについてご紹介します。
1.従業員満足度アンケートの項目例
従業員満足度アンケートの項目は、次のように、社員に聞くべき要素が網羅的に押さえられている必要があります。
【従業員満足度アンケートの項目例】
従業員満足度の指標となる要素例 |
質問項目の表現例 |
1)仕事内容への満足度 |
自身の役職や等級に割り振られる仕事の内容は適切だと思いますか? |
2)自身の成長への満足度 |
仕事を通じて知識や能力などを得て、自身が成長していると思いますか? |
3)人事評価への満足度 |
人事評価の取組みが適切に行われていると思いますか? |
4)マネジメントへの満足度 |
上司からの指導や組織の体制など、自身へのマネジメントが適切に行われていると思いますか? |
5)職場環境や社内風紀への満足度 |
自身が働く上で適切な職場環境が提供されていると思いますか? |
6)給与待遇や福利厚生への満足度 |
給与や福利厚生など、自身の待遇に満足していますか? |
7)経営方針やビジョンへの満足度 |
会社の示す経営方針やビジョンは自身が共感できる妥当な内容だと思いますか? |
8)会社の帰属の満足度 |
所属して働くことが自身にとってプラスだと感じる、○○(会社名)への愛着があると思いますか? |
9)総合的に「会社で社員として働く」ことへの満足度 |
ここまで総括して、社員として○○(会社名)で働くことに満足していると思いますか? |
上の表で挙げた従業員満足度調査の指標について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度の指標ごとに対策してエンゲージメントを高めよう
なお、質問に対する回答は、段階に分けた選択肢から評価を回答させる「単一選択式」が一般的です。
【6段階の評価を採用した回答の選択肢の例】
- 非常にそう思う
- そう思う
- ややそう思う
- あまりそう思わない
- そう思わない
- 全くそう思わない
他にも、個々の福利厚生制度についての満足度など、詳細な項目を追加すると、従業員満足度の向上施策へ活かしやすくなります。
オンラインアンケートで実施する場合、回答内容によって質問が分岐するよう設定しましょう。
【導入した福利厚生制度について詳細な質問項目を追加する例】
○○(福利厚生制度の名称)は、20XX年から導入した福利厚生制度です。対象となる社員は~~の方で、制度を利用すると~~を行えます。
○○(福利厚生制度の名称)の福利厚生制度を知っていましたか?
- 知っている
- 知らなかった
<質問分岐:制度を知っていた方のみ回答>
○○(福利厚生制度の名称)の利用についてあてはまる選択肢を選んでください。
- 自身は制度の対象であり、利用したことがある
- 自身は制度の対象ではあるが、利用したことはない
- 自身は制度の対象でないため、利用したことはない
<質問分岐:制度を利用したことがある方のみ回答>
○○(福利厚生制度の名称)を利用してみて、意見や感想があれば入力してください。(入力文字数300文字まで)
<質問分岐:制度の対象者で制度を利用したことがない方のみ回答>
○○(福利厚生制度の名称)を利用していない理由について、あてはまるものすべて選択してください。
- 制度の利用申請の方法がわからない
- 制度の手続きが煩雑
- 制度の条件や内容に不満があり、利用していない
- その他(30~40文字程度のメッセージの入力欄)
2.従業員満足度アンケートを作る時の注意点
従業員満足度アンケートは定期的に実施し、福利厚生を見直し、前回との比較を行うことで、会社をよりよくできる手段のひとつです。
集計しやすく実施しやすい「オンラインアンケート」式で実施し、評価指標にあわせて網羅的なアンケート項目を設定しましょう。
従業員満足度アンケートを作る時の注意点は次のとおりです。
1)無記名回答にして個人を特定できる情報を収集しない
2)質問文の表現はシンプルにして不必要な情報を盛り込まない
3)回答の方式は質問にあわせて適切に設定する
1)無記名回答にして個人を特定できる情報を収集しない
従業員満足度調査は、回答者を特定しない「無記名回答」が原則です。
名前なしのアンケートであれば、上司や同僚には言いにくい不満などがあっても、社員は気兼ねなく回答できます。
紙に記入するアンケートの場合、自由記述に回答した文字の癖や用紙の回収方法によって個人の特定ができてしまい、回答に本音をぶつけられなくなる恐れがあるため、ネット経由で回答するオンラインアンケートがおすすめです。
なお、名前以外で、他の複数の属性をあわせて個人を特定できてしまうため、施策につながらない質問はしないようにしましょう。
例えば、性別や年齢、扶養家族の有無などは施策を打つ際の属性として問題ありませんが、入社年度や所属部署などは組み合わせると容易に個人の特定につながるため、配慮が必要です。
2)質問文の表現はシンプルにして不必要な情報を盛り込まない
従業員満足度のアンケートで、不必要な情報を付加することはやめ、シンプルな表現を心がけましょう。
次の表にあるように、表現によって回答内容を誘導してしまったり、社員を混乱させたりすることがあります。
【不必要な情報を盛り込んでいるアンケートの表現例】
不適切な表現例 |
非推奨の理由 |
修正例 |
給与や福利厚生に満足していませんか? |
否定形の疑問表現を使うと、回答者を混乱させる。 |
給与や福利厚生に満足していますか? |
仕事を通じて自身が成長していると思えますか? |
「思える」は主観的な表現で、回答者を混乱させる。 |
仕事を通じて自身が成長していると思いますか? |
仕事を通じて自身が成長していると思われますか? |
「思われる」は敬語表現とも、論理的な説得表現とも捉えられるため、回答者を混乱させる。 |
仕事を通じて自身が成長していると思いますか? |
「今後も○○(会社名)で働き続けたい」と思いますか? |
部分的に表現を変えると、何か別の意図があるのでは?と回答者を混乱させる。 |
今後も○○(会社名)で働き続けたいと思いますか? |
言い回しや表現以外にも、従業員満足度アンケートの体裁そのものが社員を混乱させる要因になり得ます。
例えば、オンラインアンケートでは「前の質問で回答をした者だけ回答させる」といった制御を行えるため、社員を混乱させる要素を排除できます。一方、紙面でのアンケートでは回答者が対象とならない質問項目が含まれる場合、社員を混乱させる可能性があります。
また、筆跡などから個人の特定を恐れた社員が率直な回答を行わない可能性も考えられることから、「紙面でのアンケート」という体裁そのものが、従業員満足度調査に不必要な情報を取得してしまうものだと言えるでしょう。
他にも、アンケートの質問項目を分類する名称によって、社員を混乱させることがあります。一般的なオンラインアンケートでは質問項目が多い場合、グループで分類することは珍しくないため、見慣れた単語で分類されていれば問題ありません。
従業員満足度と顧客満足度に相関関係があるとする定説について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度と顧客満足度の相関関係とは?
3)回答の方式は質問にあわせて適切に設定する
アンケートの回答の方式は質問にあわせて適切に設定する必要があります。
【アンケートの回答方式の一覧】
回答の種類 |
具体例 |
単一選択式 |
「はい・いいえ」や「そう思う・そう思わない」のようにどちらかを選ぶ(二者択一) |
「非常に満足」「やや満足」「やや不満」「非常に不満」のように異なる程度を示す段階のどれかを選ぶ(段階評価) |
|
複数選択式 |
複数の選択肢の中からあてはまるもののうち「優先度が高いものを3つまで」と選択数を制限する |
複数の選択肢の中からあてはまるもの全てを選択させる(選択数を制限しない) |
|
自由記述式 |
ワンセンテンスメッセージでまとめる(30~40文字程度が目安) |
メッセージ数を制限しない(容量の関係等から300文字程度が目安) |
なお、単一選択式の段階評価は、正確性を重視するアンケートでは「わからない」・「どちらともいえない」・「答えたくない」のように「質問に対して回答を保留する選択肢」を盛り込む必要がありますが、従業員満足度のアンケートでは集計のしやすさも考慮し、できれば選択肢は4段階、多くても6段階までにした方が傾向を掴みやすくなります。
【段階評価の尺度の特徴と表現例】
集計しやすい尺度 |
正確性を重視する尺度 |
4段階の尺度とする例
|
5段階の尺度とする例
|
6段階の尺度とする例
|
7段階の尺度とする例
|
なお、評価の段階が多くなるほど、社員が自身の気持ちのニュアンスに近い選択肢を選びやすくなりますが、個人ごとの感覚の違いによる誤差も出てくるため、多ければ正確な調査に結びつきやすいというものでもありません。
また、「どちらともいえない」などの回答保留の選択肢がないことで従業員に不利益があると思われる場合、アンケートの最後に、社員が補足したいことについての自由回答欄を設けるのも有効です。
3.従業員満足度アンケートの活用ポイント
従業員満足度アンケートの活用ポイントは次のとおりです。
- アンケート調査の後は面接調査も実施する
- 従業員満足度調査の結果をもとに福利厚生を見直す
- 従業員満足度調査は定期的に実施する
アンケート調査の後は面接調査も実施する
社員に直接インタビューする「面接調査」は、アンケート調査だけではわからない、社員の深い意見や要望を聞くことができるため、アンケート調査で傾向を掴んだ後、面接調査を行うのがよいでしょう。
従業員満足度アンケート調査は評価指標をもとに網羅的に質問項目を用意することが重要ですが、面談調査はアンケートの回答結果の傾向をもとに回答を予測し、事前に質問文を作ることが重要です。
従業員満足度調査の結果をもとに福利厚生を見直す
アンケート調査と面接調査をあわせた従業員満足度の調査結果をもとに、福利厚生を見直し、改善施策を打ちましょう。
福利厚生の見直し方法について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
福利厚生の見直しはどう行う?時期とやり方について解説
従業員満足度調査は定期的に実施する
従業員満足度調査は定期的に実施し、前回との比較を行いましょう。
なお、労働環境が異なる他社と従業員満足度の数値を比較するのは参考程度にとどめましょう。
特に海外企業との従業員満足度の比較は、国ごとに労働環境の前提条件が異なるため、意味をなしません。
従業員満足度が高い企業の特徴や、従業員満足度が低い場合に打つべき施策例について知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度が高い企業の特徴とは?打つべき施策例も解説
この他に、従業員満足度を向上させる取組みについて知りたい方は次のコンテンツで詳しく解説しています。
従業員満足度を向上させる取り組みは?効果についても解説
(執筆 株式会社SoLabo)
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