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アンケート調査から読み解く不動産投資市場の現状と展望

経営課題事例

2026-02-17

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 吉田 資

目次

1.はじめに

住宅価格をはじめとする不動産価格の上昇が多く話題に上る一方で、金利上昇や建築コストの高騰などリスク要因も高まっており、不動産投資市場は先行き不透明感を増しています。そこで、本稿では、ニッセイ基礎研究所が、不動産分野の実務家・専門家を対象に今年1月に実施した「不動産市況アンケート」をもとに、不動産投資市場の現況と展望について解説します。

2.良好な景況感が継続。価格ピーク時期に対する見解はやや後ろ倒しに

「不動産投資市場全体(物件売買、新規開発、ファンド組成)の現在の景況感」について質問したところ、プラスの回答(「良い」と「やや良い」の合計)が約8割、「平常・普通」が2割弱、マイナスの回答(「悪い」と「やや悪い」の合計)が5%程度となりました(図表-1)。前回調査(2025年初)と比べてプラスの回答が増加し、良好な景況感が継続しています。

また、「東京の不動産価格のピーク時期」については、「2026年」(34%)との回答が最も多く、次いで、「2025年あるいは現時点(既に価格はピーク)」(20%)、「2027年」(15%)との回答が多い結果となりました(図表-2)。

日経不動産マーケット情報によると、2025年の不動産取引額は前年比8%増加の5兆2,485億円となり、金融危機後で初めて5兆円を超えました。不動産投資市場が堅調に推移するなか、不動産価格のピーク時期に対する見解は、前回調査と比べてやや後ろ倒しとなったものと考えられます。

図表-1 不動産投資市場全体の現在の景況感

図表-1 不動産投資市場全体の現在の景況感

(資料)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」(調査時点;2008年~2026年)

図表-2 東京の不動産価格のピーク時期

図表-2 東京の不動産価格のピーク時期

(資料)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」(調査時点;2025年1月および2026年1月)

3.オフィスと賃貸マンションへの投資家の期待が高まる

「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「オフィスビル」(59%)との回答が最も多く、次いで「賃貸マンション」(52%)、「データセンター1」(51%)、「ホテル」(50%)との回答が多い結果となりました(図表-3)。

また、前回調査から回答割合が10%以上増加した投資セクター(期待が高まった投資セクター)は、「オフィスビル」(30%→59%)と「賃貸マンション」(35%→52%)でした。

「オフィスビル」に関して、三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2025年第4四半期の東京都心部Aクラスビル空室率は0.6%(前期比▲0.7ppt、前年同期比▲5.1ppt)と大幅に低下し、成約賃料(月坪)は35,492円(前期比+4.1%)と9四半期連続で上昇しています。東京のオフィス市況が堅調に推移するなか、投資家の期待が高まっていると考えられます。

また、「賃貸マンション」に関して、都市部への人口流入を背景に賃料の上昇が続いています2。三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム「マンション賃料インデックス」によると、2025年第3四半期の東京23区のマンション賃料は、シングルタイプが前年同期比+7.6%、コンパクトタイプが同+6.9%、ファミリータイプが同+11.7%と全ての住居タイプで上昇しました。

一方、前回調査から回答割合が10%以上減少した投資セクター(期待が後退した投資セクター)は、「ホテル」(73%→50%)でした。日本政府観光局によると、2025年の訪日外客数は約4,268 万人(前年比+16%)と過去最高を更新しました。一方で、日中関係の悪化に伴う渡航自粛要請を背景に、2025年12月の中国からの訪日客数は前年同月比▲45%と大幅に減少しました3。ホテルへの関心は引き続き高いものの、今後インバウンド需要が鈍化するとの懸念から、期待がやや後退したと考えられます。

1 今回の調査から、「産業関連施設(データセンターなど)」の選択肢を「データセンター」と「研究開発施設(R&D施設、ラボ施設など)」に区分した。
2 毎日新聞「歴史的な家賃の急上昇 理由は小さくなった「転売のうまみ」?」(2025年10月15日)
3 朝日新聞「2025年の訪日外国人、初の4千万人突破 12月は中国から大幅減」(2026年1月20日)

図表-3 今後、価格上昇や市場拡大が期待できるセクター

図表-3 今後、価格上昇や市場拡大が期待できるセクター

(資料)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」(調査時点;2025年1月および2026年1月)

4.リスク要因は、国内金利・建築コスト・国内景気といった国内要因に集まる

「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「国内金利」(73%)との回答が最も多く、次いで、「建築コスト」(72%)、「国内景気・経済」(29%)との回答が多い結果となりました(図表-4)。

また、前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「建築コスト」(62%→72%)、「国内景気・経済」(14%→29%)、「国内政治・外交」(5%→22%)でした。一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は、「米国政治・外交」(44%→22%)でした。

今回の調査では、「国内金利」や「建築コスト」、「国内景気・経済」といった国内要因が上位を占める一方、トランプ米大統領の政権運営など「海外要因」への懸念が相対的に後退する結果となりました。

ただし、米調査会社ユーラシア・グループが公表した2026年に世界が直面する「10大リスク」によれば、第1位は「米国の政治革命」、第3位は「ドンロー主義(トランプ版モンロー主義)」となり、トランプ政権に関連する項目が上位を占めています4。引き続き、不動産投資市場におけるリスク要因として注視する必要があると考えられます。

図表-4 不動産投資市場のリスク要因

図表-4 不動産投資市場のリスク要因

(注1)今回調査(2026年)から選択肢に追加。 (注2)前回調査(2025年)まで選択肢。
(資料)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」(調査時点;2025年1月および2026年1月)

4 産経新聞「首位にトランプ氏「政治革命」2026年の10大リスク、3位「ドンロー主義」米調査会社」(2026年1月6日)

5.おわりに

前述のとおり、不動産投資市場は堅調に推移しており、見通しについても、楽観的な見方が強まっています。

一方、リスク要因として最も回答が多かった「国内金利」に関して、10年国債利回りは上昇基調で推移しており、今年1月には一時2.3%台まで上昇し、27年ぶりの高水準となりました。今後も日本銀行による追加利上げや財政拡大への警戒感が強まるなか、ベースレートの上昇に伴い不動産キャップレートが反転に向かう可能性もあります。

また、「建築コスト」に関して、野村不動産ソリューションズ・不動産経済研究所「建築コストに関するアンケート」によると、建築コストの高騰が開発事業に影響を及ぼしているとの回答が約9割を占めました。資材価格や労務費などの上昇が継続するなか、新規開発計画の見直しや竣工時期の延期が増えている模様です。

今年度は、金利や建築費等の動向に注視し、環境変化に即した不動産投資判断がこれまで以上に求められる一年となると思われます。

以上

(執筆 ニッセイ基礎研究所 金融研究部 吉田 資)

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

生25-7597,法人開拓戦略室


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三幸エステート「オフィスレント・インデックス」
https://www.sanko-e.co.jp/data/rent-index/

三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム「マンション賃料インデックス」
https://www.smtri.jp/market/mansion/

朝日新聞「2025年の訪日外国人、初の4千万人突破 12月は中国から大幅減」(2026年1月20日)
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産経新聞「首位にトランプ氏「政治革命」2026年の10大リスク、3位「ドンロー主義」米調査会社」(2026年1月6日)
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