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進めたい働き方改革! 従業員の多様な働き方を支援する助成金

経営課題事例

2024-12-13

テレワークなど従業員の労働条件に関するニーズは多様化しています。働き方改革関連の助成金の中でも従業員の多様な働き方を支援する助成金を紹介します。

目次

テレワーク(リモートワーク)や副業など働き方が多様化している昨今、労働条件に関する従業員のニーズも多様化してきています。

例えば、オフィスで働くのが当たり前だった頃は、従業員は自分やその家族が出産した場合、長期の育休(育児休業)を取得するのが通常でした。しかし、テレワークなどで仕事と育児がある程度両立しやすくなった今、「長期ではなく、必要に応じた期間だけ休みを取りたい」という従業員も出てきています。2022年10月から新設された「育休の分割取得」の制度や、男性従業員向けの短期の休業制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」などは、こうした従業員のニーズを後押ししているといえるでしょう。

また、高年齢者についていえば、医療の進歩などによって現役で働ける時間が長くなっている分、「定年前と同じ基準で仕事ぶりを評価してほしい」というニーズも高まってきています。

更に、副業をする関係で非正規社員になっている従業員の中には、「非正規社員でも正社員より業績に貢献しているのだから、もっと待遇を良くしてほしい」と考えている人もいるでしょう。

こうしたニーズにどこまで応えるかは企業次第ですが、少なくとも、多様なニーズに対応できる企業は従業員にとって非常に魅力的です。

そこで、本稿では、働き方改革関連の助成金の中でも、従業員の多様な働き方を支援する代表的な助成金の概要・申請方法・申請のポイントを紹介します。

1.両立支援等助成金(5種類)

1)助成金の概要、用途

「休業・休暇制度の見直しにかかるコンサルティング費用」「育児・介護休業中のフォローに入る他の従業員の人件費」など、従業員の育児・介護に関する企業の負担を軽減できる助成金です。

例えば、両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」を利用すると、男性従業員が育休や産後パパ育休を取得した際に助成を受けられます。つまり、「テレワークをしているから育休は必要ないけど、産後パパ育休を取りたい」という男性従業員を後押しできます。

経営者や上司などが「会社の負担は両立支援等助成金で軽減できるから大丈夫」と背中を押してあげると、従業員は安心して休むことができるでしょう。

なお、育休や産後パパ育休など各種支援制度の概要、休業中の生活保障など、注意すべきポイントについては、次のコンテンツで分かりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
【2024年最新】子育てと仕事の両立! 支援制度や助成金、事例を紹介

2)助成金を申請できる対象事業者、助成金額

助成金を申請できる対象事業者は、次の各コースの要件を満たす企業です。ただし、いずれも対象は中小企業に限られ、助成金額はコースによって異なります。

なお、要件などの詳細については、厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」

1.出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

従業員が育休等(育休・産後パパ育休の他、これらに準ずる休業制度)を取得しやすいよう雇用環境や業務体制を整備し、その結果、従業員が育休等を取得した場合に助成を受けられます。

なお、当コースで申請をした同一の育児休業については、後述の育児休業等支援コースとの併給申請はできません。

種類 どんな場合に受け取れる? いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
第1種 雇用環境や業務体制を整備し、男性従業員が産後8週間以内に連続5日以上の育休等を取得した場合 ●1人目:20万円(注3)
●2人目・3人目:10万円
※1企業につき3人まで
第2種
(第1種の助成金を受給した場合のみ)
第1種の申請から3事業年度以内に男性従業員の育休等の取得率が一定の要件を満たした場合
※育休等を取得した男性従業員が、第1種申請の対象者の他に2人以上必要
●60万円(1事業年度以内に取得率が30%以上上昇)
●40万円(2事業年度以内に取得率が30%以上上昇、または2年連続で70%以上(注4))
●20万円(3事業年度以内に取得率が30%以上上昇、または2年連続で70%以上(注4))
※1企業につき1回まで
  プラチナくるみん認定事業主への加算 事業主がプラチナくるみん認定を受けている場合(第1種(1人目)の育休等終了前の認定に限る) ●15万円

(出所:厚生労働省「2024(令和6)年度両立支援等助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)雇用環境整備措置を4つ以上実施する場合、30万円になります。

(注4)第2種における「取得率が2年連続で70%以上」の要件については、第1種の申請年度に父親となった男性従業員(雇用保険被保険者)が5人未満の場合に限られます。

(注5)上記の他、第1種(1人~3人目のいずれか)の申請に際し、自社の育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省指定のサイト上(両立支援のひろば)に公表した場合、2万円(1回限り)が加算されます。

2.育児休業等支援コース

「育休復帰支援プラン」に基づき、従業員の育休等の取得や職場復帰が円滑に進むよう、企業が一定の取り組みをした場合に助成を受けられます。

種類 どんな場合に受け取れる? いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
育休取得時 支援方針の周知、プランの作成をした上で、従業員に連続3カ月以上の育休等を取得させた場合 ●30万円
※1企業につき、無期雇用・有期雇用それぞれ1人まで
職場復帰時
(育休取得時の助成金を受給した場合のみ)
「育休取得時」の従業員の育休等が終了する際、面談の上、原則として現職等に復帰させ、6カ月以上継続雇用(注3)した場合 ●30万円
※1企業につき、無期雇用・有期雇用それぞれ1人まで

(出所:厚生労働省「2024(令和6)年度両立支援等助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)継続雇用時は、雇用保険の被保険者である必要があります。

(注4)上記の他、本コースの申請に際し、自社の育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省指定のサイト上(両立支援のひろば)に公表した場合、2万円(1回限り)が加算されます。

3.育休中等業務代替支援コース

従業員が育休等の取得や、短時間勤務制度の利用をしている間、業務をカバーする他の従業員に手当等の支給や、代替要員を新たに雇用した場合に助成を受けられます。

なお、本コースの「手当支給等(育児休業)」「新規雇用(育児休業)」については、前述の「出生時両立支援コース(第1種)」または「育児休業等支援コース(育休取得時)」のいずれかと併給申請が可能です。

種類 どんな場合に受け取れる? いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
手当支給等
(育児休業)
従業員が7日以上の育休等を取得し、かつその業務をカバーする他の従業員に手当等(注3)を支給した場合 以下の合計額 (最大で125万円)
●業務体制整備経費:5万円(育休等が1カ月未満の場合:2万円)
●手当支給総額の3/4(上限10万円/月、12カ月まで)
※手当支給等(短時間勤務)、新規雇用(育児休業)と合わせ、1企業につき1年度10人まで(5年間支給)
  プラチナくるみん認定事業主への加算 事業主がプラチナくるみん認定を受けている場合 支給率が下記に変更
●手当支給総額の4/5
  有期雇用労働者加算 育休等の取得者が有期雇用の場合(注4) ●10万円
手当支給等
(短時間勤務)
従業員が短時間勤務制度を1カ月以上利用し、かつその業務をカバーする他の従業員に手当等(注3)を支給した場合 以下の合計額(最大で110万円)
●業務体制整備経費:2万円
●手当支給総額の3/4(上限3万円/月、子どもが3歳になるまで)
※手当支給等(育児休業)、新規雇用(育児休業)と合わせ、1企業につき1年度10人まで(5年間支給)
  有期雇用労働者加算 短時間勤務の利用者が有期雇用の場合(注4) ●10万円
新規雇用
(育児休業)
従業員が7日以上の育休等を取得し、かつその業務をカバーする他の従業員を新規雇用・派遣受入で確保し、実際に業務を代替させた場合 代替期間に応じた額を支給
●最短:7日以上14日未満 9万円
●最長:6カ月以上 67.5万円
※手当支給等(育児休業)、手当支給等(短時間勤務)と合わせ、1企業につき1年度10人まで(5年間支給)
  プラチナくるみん認定事業主への加算 事業主がプラチナくるみん認定を受けている場合 代替期間に応じた額が下記に変更
●最短:7日以上14日未満 11万円
●最長:6カ月以上 82.5万円
  有期雇用労働者加算 育休等の取得者が有期雇用の場合(注4) ●10万円

(出所:厚生労働省「2024(令和6)年度両立支援等助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)手当等の支給方法は、あらかじめ就業規則等に規定する必要があります。

(注4)業務代替期間が1カ月以上の場合に限ります。

(注5)上記の他、本コースの申請に際し、自社の育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省指定のサイト上(両立支援のひろば)に公表した場合、2万円(1回限り)が加算されます。

4.柔軟な働き方選択制度等支援コース

育児期の柔軟な働き方に関する制度を複数導入した上で、企業が作成する「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき、制度利用者を支援した場合に助成を受けられます。

種類 どんな場合に受け取れる? いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
制度を2つ導入し、対象者が制度利用 柔軟な働き方選択制度等(注3)の導入、支援方針の周知、プランの作成をした上で、従業員が6カ月間に、制度を一定基準以上利用した場合 ●20万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)
制度を3つ導入し、対象者が制度利用 ●25万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)
●20万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)
制度を4つ以上導入し、対象者が制度利用 ●25万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)

(出所:厚生労働省「2024(令和6)年度両立支援等助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。なお、改正育児・介護休業法における「柔軟な働き方を実現するための措置」(2025年10月1日施行)が適用になった後の改定となる予定です。

(注3)対象となる制度は次の5種類です。()内は6カ月間における利用基準です。

  • フレックスタイム制/時差出勤制度(合計20日以上制度利用)
    始業・終業時刻や労働時間を労働者が決定/始業・終業の1時間以上の繰上げ・繰下げ
  • 育児のためのテレワーク等(合計20日以上制度利用)
    勤務日の半数以上利用可能、時間単位利用可能
  • 短時間勤務制度(合計20日以上制度利用)
    1日1時間以上の所定労働時間短縮、1日6時間以外の短縮時間も利用可能
  • 保育サービスの手配・費用補助制度(従業員負担額の5割以上かつ3万円以上、または10万円以上の補助)
    一時的な保育サービスを手配し、サービスの利用に係る費用の全部または一部を補助
  • 子の養育を容易にするための休暇制度/法を上回る子の看護休暇等制度(合計20時間以上取得)
    有給、年10日以上取得可能、時間単位取得可能な休暇制度

(注4)2025年度からは、上記に加え、「子の看護等休暇制度を有給化した場合に制度導入助成として30万円」「制度の対象となる子の年齢を中学校卒業まで引き上げた場合に助成加算として20万円」の助成が受けられるようになる予定です(どちらも1企業につき1回まで)。

5.介護離職防止支援コース

企業が作成する「介護支援プラン」に基づき、円滑な介護休業の取得・復帰や介護のための柔軟な就労形態の制度利用を支援した場合に助成が受けられます。

種類 どんな場合に受け取れる? いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
介護休業取得・復帰 支援方針の周知、個人面談、プランの作成をした上で、対象者が5日以上の介護休業を取得し、その後原職等に復帰した場合 ●休業取得時:30万円
●職場復帰時:30万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)
●休業取得・職場復帰時:
(休業5日以上)40万円
(休業15日以上)60万円
※1企業につき1年度5人まで(期間の上限なし)
  業務代替支援加算 代替要員を新規雇用等で確保した場合、または代替要員を確保せずに周囲の社員に手当を支給して業務を代替させた場合 ●新規雇用等:20万円
●手当支給等:5万円
●新規雇用等:
(休業5日以上)20万円
(休業15日以上)30万円
●手当支給等:
(休業5日以上)5万円
(休業15日以上)10万円
●短時間勤務中の手当支給等:
(休業15日以上)3万円
介護両立支援制度 支援方針の周知、個人面談、プランの作成をした上で、支給申請日までに、従業員が介護両立支援制度(注3)のうちの1つを一定以上利用した場合 ●制度利用:30万円
※同一の従業員につき同一の制度を利用する場合は1回まで、複数の制度を利用する場合は2回まで
●制度を1つ導入
(20日以上の利用)20万円
(60日以上の利用)30万円
●制度を2つ以上導入
(20日以上の利用)25万円
(60日以上の利用)40万円
※同一の従業員につき同一の制度を利用する場合は1回まで、複数の制度を利用する場合は2回まで
  個別周知・環境整備加算(注4) 対象者に、介護に係る自社制度・介護休業の取得時の待遇について資料で説明し、雇用環境整備の措置(注5)を2つ以上講じた場合
※2025年度は環境整備加算のみで、雇用環境整備の措置は4つ講じる必要がある

●個別周知+環境整備(措置2つ以上):15万円

●環境整備(措置4つ):10万円

(出所:厚生労働省「2024(令和6)年度両立支援等助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)対象となる制度は「所定外労働の制限制度」「深夜業の制限制度」「介護のための在宅勤務制度」「介護のためのフレックスタイム制」「時差出勤制度」「短時間勤務制度」「法を上回る介護休暇制度」「介護サービス費用補助制度」です。

(注4)「介護休業取得・復帰」の「休業取得時」も加算対象となります。

(注5)対象となる措置は「介護休業等に係る研修の実施」「介護休業等に関する相談体制の整備」「介護休業等の取得・利用に関する事例の収集・提供」「介護休業等に関する制度およびその取得・利用の促進に関する方針の周知」です。

3)助成金の申請方法、申請のポイント

助成金を申請する際は、各コースの支給申請書に必要事項を記載し、所轄の労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。問合せ窓口も同じです。電子申請も可能となっています。

申請して助成金を受け取るために知っておきたいポイントは次の2点です。

  • 出生時両立支援コース、育休中等業務代替支援コースは、事業主が「プラチナくるみん認定」を受けている場合に加算を受けられます。また、助成金の加算が受けられるのに加え、「プラチナくるみんマーク」を広告等に表示することで、子育てサポートについて高い水準の取り組みを行っていることを社内外にアピールできます。
  • 育児休業等支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コース、介護離職防止支援コースはそれぞれ「育休復帰支援プラン」「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」「介護支援プラン」を作成する必要があります。厚生労働省ではプラン策定のノウハウを持つプランナーが無料で策定支援をする取り組みを行っているので、相談するとよいでしょう。

2.65歳超雇用推進助成金(3種類)

1)助成金の概要、用途

「高年齢者の評価制度の見直しにかかるコンサルティング費用」「定年引き上げによって延長された年数分の人件費」など、高年齢者の待遇改善にかかる企業の負担を軽減できる助成金です。

例えば、この助成金を使って再雇用後の評価制度を見直すことで、「定年前と同じように仕事ぶりを評価してほしい」といった従業員のニーズに対応することができるようになります。

また、現状、各企業には従業員を65歳まで雇用する措置を講じることが義務付けられていますが、2021年4月よりこれを70歳に引き上げることが努力義務化されました(※)。そのため、この助成金を利用しながら、制度改革を図ることを検討するとよいでしょう。
(※)ただし、フリーランス契約など雇用以外の措置で対応することも可能です。

定年延長や再雇用制度を導入する際の賃金や退職金など、注意すべきポイントについては、次のコンテンツで分かりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
定年延長、再雇用時代に求められる注意点を解説

2)助成金を申請できる対象事業者、助成金額

助成金を申請できる対象事業者は、コースごとに要件が異なります。「65歳超継続雇用促進コース」の場合は定年の引き上げや継続雇用、「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」の場合は高年齢者雇用管理整備措置の実施、「高年齢者無期雇用転換コース」の場合は有期契約労働者の無期雇用への転換などの要件を満たす必要があり、助成金額はコースによって異なります。

なお、要件などの詳細については、厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。
厚生労働省「65歳超雇用推進助成金」

1.65歳超継続雇用促進コース

次の制度のいずれかを実施した場合に助成が受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
65歳以上への定年引上げ 60歳以上の雇用保険被保険者数に応じ、以下の通り
●1~3人:年齢設定に応じ、15万~30万円
●4~6人:年齢設定に応じ、20万~50万円
●7~9人:年齢設定に応じ、25万~85万円
●10人以上:年齢設定に応じ、30万~105万円
※1企業につき1回まで
定年の定めの廃止 60歳以上の雇用保険被保険者数に応じ、以下の通り
●1~3人:40万円
●4~6人:80万円
●7~9人:120万円
●10人以上:160万円
※1企業につき1回まで
希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入 60歳以上の雇用保険被保険者数に応じ、以下の通り
●1~3人:年齢設定に応じ、15万~30万円
●4~6人:年齢設定に応じ、20万~50万円
●7~9人:年齢設定に応じ、40万~80万円
●10人以上:年齢設定に応じ、60万~100万円
※1企業につき1回まで
他社による継続雇用制度の導入 ●年齢設定に応じ、10万~15万円
※1企業につき1回まで

(出所:厚生労働省「令和6年度65歳超雇用推進助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (職業安定局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (職業安定局)」に記載されているものです。

(注3)制度の内容について、あらかじめ就業規則等に規定する必要があります。

2.高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

55歳以上の高年齢者に対し、高年齢者雇用管理整備措置を実施した場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 ●1企業当たり支給対象経費(上限50万円)×60%
※申請回数の制限なし。なお、初回のみ、経費実費の金額にかかわらず「50万円×60%」を支給
中小企業以外 ●1企業当たり支給対象経費(上限50万円)×45%
※申請回数の制限なし。なお、初回のみ、経費実費の金額にかかわらず「50万円×45%」を支給

(出所:厚生労働省「令和6年度65歳超雇用推進助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (職業安定局)」を基に作成)を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (職業安定局)」に記載されているものです。

(注3)高年齢者雇用管理整備措置に該当するのは次の6つです。

  • 高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善
  • 高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入または改善
  • 高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善
  • 高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるために必要な知識を付与するための研修制度の導入または改善
  • 専門職制度など、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善
  • 法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入 等

3.高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上で定年年齢未満の有期雇用者を無期雇用に転換した場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 ●1人当たり30万円
※1企業につき1年度10人まで
中小企業以外 ●1人当たり23万円
※1企業につき1年度10人まで

(出所:厚生労働省「令和6年度65歳超雇用推進助成金のご案内」「令和7年度概算要求の概要 (職業安定局)」を基に作成)を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要(職業安定局)」に記載されているものです。

3)助成金の申請方法、申請のポイント

助成金を申請する際は、各コースの支給申請書に必要事項を記載し、所轄の高齢・障害・求職者雇用支援機構都道府県支部に提出します。問合せ窓口も同じです。なお、本助成金は電子申請の対象外です。

申請して助成金を受け取るために知っておきたいポイントは次の2点です。

  • 「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」の申請にあたっては、高年齢者雇用管理整備措置などについて定めた「雇用管理整備計画」を、「高年齢者無期雇用転換コース」の申請にあたっては、無期雇用労働者への転換の実施時期などについて定めた「無期雇用転換計画」を提出し、認定を受ける必要があります。
  • 「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」は、高年齢者雇用管理整備措置を1年以内に行うことが要件となるので注意が必要です。

3.キャリアアップ助成金(6種類)

1)助成金の概要、用途

非正規社員の賃金制度の見直しにかかるコンサルティング費用、正社員化による人件費増加など、非正規社員の待遇改善にかかる企業の負担を軽減できる助成金です。

例えば、この助成金を使って能力が高い非正規社員の賃上げを図ることで、「雇用形態に関係なく、企業への貢献度によって処遇してほしい」といった非正規社員のニーズに対応することができるようになります。

また、全ての企業ではいわゆる「同一労働同一賃金」に関する法規制により、基本給、賞与などの待遇について正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることが禁止されています。とはいえ、非正規社員の待遇改善に取り組んだ結果、人件費が圧迫されることも予想されるので、この助成金を活用して、同一労働同一賃金を実現しつつ企業負担を軽減することを検討するとよいでしょう。

なお、同一労働同一賃金の概要、正社員とパート等の待遇差の解消方法など、注意すべきポイントについては、次のコンテンツで分かりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
同一労働同一賃金での実務対応のポイントは?

2)助成金を申請できる対象事業者、助成金額

助成金を申請できる対象事業者は、キャリアアップ管理者(非正規従業員のキャリアアップに主に携わる者)を置き、キャリアアップ計画を作成して、所轄労働局長の受給資格の認定を受けた企業で、助成金額はコースによって異なります。

なお、要件などの詳細については、厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。
厚生労働省「キャリアアップ助成金」

1.正社員化コース

非正規社員を正社員に転換した場合に助成を受けられます。助成を受けるには、非正規社員(賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等を、6カ月以上適用した者)を正社員に転換した後、6カ月間の賃金を、転換前6カ月間の賃金と比較して3%以上増額していることが必要になります。

なお、2023年11月29日以降の正社員化については申請を2期制とし、第1期となる正社員化後6カ月間の賃金と第2期(第1期後の6カ月間)の賃金を比較して、合理的な理由なく引き下げていない場合に追加助成されるという新たなルールが付け加わっています。ただし、2025年度から第2期の支給を受けられるのは、次の1.から3.のいずれかの「重点対象者」に限られます。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用者
  • 雇入れから3年未満の有期雇用者で、過去から不安定雇用が継続している者
  • 人材開発支援助成金の対象訓練を受けた者、派遣労働者、母子家庭の母等
種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:
80万円(40万円×2期)

●無期雇用者の正社員化:
40万円(20万円×2期)

※1企業につき1年度20人まで

<通常の正社員転換制度を新たに規定し転換 20万円の加算(1企業につき1回まで)>
<勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し転換 40万円の加算(1企業につき1回まで)>
1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:
重点対象者80万円(40万円×2期)
重点対象者以外40万円(40万円×1期)

●無期雇用者の正社員化:
重点対象者40万円(20万円×2期)
重点対象者以外20万円(20万円×1期)

※1企業につき1年度20人まで

<通常の正社員転換制度を新たに規定し転換 20万円の加算(1企業につき1回まで)>
<勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し転換 40万円の加算(1企業につき1回まで)>
中小企業以外 1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:
60万円(30万円×2期)


●無期雇用者の正社員化:
30万円(15万円×2期)


※1企業につき1年度20人まで

<通常の正社員転換制度を新たに規定し転換 15万円の加算(1企業につき1回まで)>
<勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し転換 30万円の加算(1企業につき1回まで)>
1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:
重点対象者60万円(30万円×2期)
重点対象者以外30万円(30万円×1期)

●無期雇用者の正社員化:
重点対象者30万円(15万円×2期)
重点対象者以外15万円(15万円×1期)

※1企業につき1年度20人まで

<通常の正社員転換制度を新たに規定し転換 15万円の加算(1企業につき1回まで)>
<勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し転換 30万円の加算(1企業につき1回まで)>

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

2.障害者正社員化コース

一定の障がいがある非正規社員(賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等を、6カ月以上適用した者)を正社員に転換したり、有期雇用から無期雇用に転換したりした場合に助成を受けられます。

支給対象期間は1年間で、最初の6カ月を第1期、次の6カ月を第2期の支給対象期とし、2期に分けて助成金が支給されます。なお、第1期については、転換前6カ月間の賃金と比べて減額されていないこと、第2期については、第1期の賃金額と比較して合理的な理由なく引き下げていないことが支給要件となっています。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:上限120万円(60万円×2期)
●有期雇用者の無期雇用化:上限60万円(30万円×2期)
●無期雇用者の正社員化:上限60万円(30万円×2期)
※支給回数等の上限は特になし
中小企業以外 1人当たり以下の額
●有期雇用者の正社員化:上限90万円(45万円×2期)
●有期雇用者の無期雇用化:上限45万円(22.5万円×2期)
●無期雇用者の正社員化:上限45万円(22.5万円×2期)
※支給回数等の上限は特になし

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)支給対象者が次のいずれに該当するかによって、支給額が異なります。

  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
  • 重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者

(注4)助成額が各支給対象期における社員の賃金を超える場合は、当該賃金の総額が助成の上限となります。

3.賃金規定等改定コース

非正規社員の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 賃上げ率に応じ、1人当たり以下の額
●3%以上5%未満:5万円
●5%以上    :6.5万円
※1企業につき1年度100人まで

<職務評価の活用 20万円の加算(1企業につき1回まで)>
賃上げ率に応じ、1人当たり以下の額
●3%以上4%未満:4万円
●4%以上5%未満:5万円
●5%以上6%未満:6.5万円
●6%以上    :7万円
※1企業につき1年度100人まで

<職務評価の活用 20万円の加算(1企業につき1回まで)>
<昇給制度の新設 20万円の加算(1企業につき1回まで)>
中小企業以外 賃上げ率に応じ、1人当たり下記の額
●3%以上5%未満:3.3万円
●5%以上    :4.3万円
※1企業につき1年度100人まで

<職務評価の活用 15万円の加算(1企業につき1回まで)>
賃上げ率に応じ、1人当たり下記の額
●3%以上4%未満:2.6万円
●4%以上5%未満:3.3万円
●5%以上6%未満:4.3万円
●6%以上    :4.6万円
※1企業につき1年度100人まで

<職務評価の活用 15万円の加算(1企業につき1回まで)>
<昇給制度の新設 15万円の加算(1企業につき1回まで)>

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

(注3)「職務評価」とは、従業員の待遇が職務の大きさ(業務内容・責任の程度)に応じたものになっているか把握することです。

4.賃金規定等共通化コース

非正規社員について、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成して適用した場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 ●1企業につき60万円 ※1企業につき1回まで
中小企業以外 ●1企業につき45万円 ※1企業につき1回まで

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

5.賞与・退職金制度導入コース

非正規社員を対象とする賞与・退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 ●1企業につき40万円 ※1企業につき1回まで
<賞与・退職金制度を同時に導入 16.8万円の加算>
中小企業以外 ●1企業につき30万円 ※1企業につき1回まで
<賞与・退職金制度を同時に導入 12.6万円の加算>

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注1)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

(注2)【2025年度(予定)】の内容は、厚生労働省「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」に記載されているものです。

6.社会保険適用時処遇改善コース

短時間労働者が社会保険の適用を受けるようになった際に、手当等の支給、賃上げ、労働時間の延長等を実施した場合に助成を受けられます。

種類 いくら受け取れる?
2024年度 2025年度(予定)
中小企業 ●手当等支給メニュー:
1~2年目に一定の手当の支給または賃上げ、3年目に基本給の総支給額の増額
1人当たり50万円(1~2年目:10万円×4期+3年目:10万円)

●労働時間延長メニュー:
社会保険加入に際し、週の所定労働時間を4時間以上延長する等
1人当たり30万円

※基本的に1人当たり1メニューまで
中小企業以外 ●手当等支給メニュー:
1~2年目に一定の手当の支給または賃上げ、3年目に基本給の総支給額の増額
1人当たり37.5万円(1~2年目:7.5万円×4期+3年目:7.5万円)

●労働時間延長メニュー:
社会保険加入に際し、週の所定労働時間を4時間以上延長する等
1人当たり22.5万円

※基本的に1人当たり1メニューまで

(出所:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」「令和7年度概算要求の概要 (雇用環境・均等局)」を基に作成)

(注)要件などの詳細については厚生労働省ウェブサイトの支給要領をご確認ください。

「手当等支給メニュー」と「労働時間延長メニュー」は、基本的に1人当たり1メニューまでですが、それぞれのメニューを併用することができる「併給メニュー」もあります。併給メニューを利用する場合、例えば1年目に手当等支給、2年目に労働時間延長を実施して、それぞれのメニューの助成を受けることが可能です(このケースの場合、中小企業であれば2年間の助成合計額は50万円)。

3)助成金の申請方法、申請のポイント

助成金を申請する際は、各コースの支給申請書に必要事項を記載し、所轄の都道府県労働局に提出します。問合せ窓口も同じです。電子申請も可能となっています。

申請して助成金を受け取るために知っておきたいポイントは次の2点です。

  • キャリアアップ助成金を申請する場合、キャリアアップ計画を作成し、各コース実施日の前日までに提出し、所轄労働局長の認定を受けることが必要です。なお、所轄労働局やハローワークではキャリアアップ計画の作成のサポートも行っているので活用すべきでしょう。
  • 賃金規定等改定コースは、賃金規定等改定にあたって「職務評価」を活用した場合、職務評価加算を受けることができます。職務評価は、同一労働同一賃金の実現にも有効です。厚生労働省ウェブサイトでは、職務分析、職務評価に関するマニュアルなども公開されているので、これを機に改定を検討するのも一案です。

4.従業員の多様な働き方を支援する助成金に関する一問一答

1)両立支援等助成金に関連する「育休」「産後パパ育休」「介護休業」とは?

育休(育児休業)は、原則、子どもが生まれてから1歳になるまで休業できる制度で、男性・女性ともに取得可能です。原則1歳までですが、保育所が見つからない場合等は最長2歳まで、夫婦が2人とも取れば、1歳2カ月まで延長できます(パパ・ママ育休プラス)。なお、2022年10月からは、2回までの分割取得が認められるようになっています。

産後パパ育休(出生時育児休業)は、2022年10月から始まった、子どもが産後8週間になるまでに4週間まで休業できる制度で、原則男性だけが取得可能です。産後パパ育休も、2回までの分割取得が可能です。なお、産後パパ育休と育休は別々に取得できます。

介護休業は、要介護状態の対象家族を介護する社員が申し出た場合、介護のために対象家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です。こちらは3回までの分割取得が可能です。

2)65歳超雇用推進助成金に関連する「65歳までの高年齢者雇用確保措置」「70歳までの高年齢者就業確保措置」とは?

65歳までの高年齢者雇用確保措置とは、各企業に実施が義務付けられている、従業員を65歳まで雇用する措置のことです。具体的には、「定年廃止」「定年延長(65歳まで)」「継続雇用制度(65歳まで)」の3つが対象になります。なお、継続雇用制度は大きく「再雇用制度」「勤務延長制度」の2種類に分けられます。

70歳までの高年齢者就業確保措置とは、従業員に70歳まで働く機会を与えるための措置のことで、こちらは実施が努力義務になっています。「定年廃止」「定年延長(70歳まで)」「継続雇用制度(70歳まで)」の3つに加え、自社での雇用以外の働き方として「他企業への再就職支援」「フリーランス契約への資金提供」「起業支援」「NPOなどへの資金提供」という選択肢が用意されています。

3)キャリアアップ助成金に関連する「同一労働同一賃金」とは?

同一労働同一賃金とは、「同じ仕事をしている従業員には、原則として同じ待遇を保障しなければならない」という考え方です。例えば、職務内容など(職務内容、トラブル時に求められる対応、キャリアパスなど)が全て正社員と同じ非正規社員がいたら、基本給、賞与、手当などを正社員と同じように支給しないといけません(成果、能力、経験の違いなどによる待遇差はある程度許容されます)。

基本となるルールは「不合理な待遇差の禁止」と「待遇に関する説明義務」の2つです。

「不合理な待遇差の禁止」とは、職務内容などが同じ従業員は同じ待遇にする(均等待遇)、違う場合は違いの内容に応じた合理的な待遇にする(均衡待遇)というルールです。例えば、同じ電車通勤なのに、正社員には通勤手当を支給して、非正規社員に支給しないのは、合理的とはいえないので許されません。

「待遇に関する説明義務」とは、非正規社員に対し、待遇についてきちんと説明をしなければならないというルールです。例えば、非正規社員から求めがあった場合、企業は正社員との待遇差の内容・理由などを説明しなければなりません。

4)複数の助成金を同時に受給することは可能か?

両立支援等助成金、65歳超雇用推進助成金、キャリアアップ助成金については、次のルールにより併給(助成金を同時に受給すること)が認められないケースがあります。

  • 同一の企業による同一の行為を根拠とする、2つ以上の助成金の併給は不可
  • 同一の企業による同一の経費・賃金の支出について、2つ以上の助成金の併給は不可
  • 企業が助成金以外の補助金等を受給していて、その補助金等と申請する助成金の趣旨や目的、助成内容等が明らかに異なっているものや、次のいずれにも該当するものは併給調整を行わない
  • 助成金と財源が異なる
  • 補助金等が助成金との調整を予定しておらず、併給を認めている
  • 助成金の助成対象について重複して助成を受けることが明確であって、当該助成を合算した額が自ら負担した経費・賃金の額を超えることが見込まれるものでない

例えば、両立支援等助成金の場合、「出生時両立支援コース」と「育児休業等支援コース」はどちらも従業員が育休等を取得したことを理由に支給されるため、1回の育休等について2つのコースの助成金を同時に受給することはできません(育休等を分割取得して、それぞれの育休等で別々の助成金を受給することは可)。

なお、助成金間の併給調整については、上記の他にも細かいルールがあるため、併給を検討している場合、必要に応じて厚生労働省などに相談することをお勧めします。

5)助成金に関連して、押さえておいたほうがいい法改正はある?

3つの助成金のうち両立支援等助成金に関しては、育児・介護休業法との関連が深いため、以下の法改正の内容を押さえておきましょう。

(2025年4月1日から)

  • 所定外労働の制限:対象となる子どもの年齢が「3歳未満」から「小学校入学前」に引き上げ
  • 子の看護休暇:名称が「子の看護等休暇」に変更。子どもの学校行事に参加する場合などにも取得可能に。対象となる子どもの年齢も、「小学校入学前」から「小学校3年生修了まで」に引き上げ
  • 所定労働時間の短縮措置等:3歳未満の子どもを育てる従業員に対し、短時間勤務をさせることが困難な場合の代替措置(フレックスタイム制など)の1つとしてテレワークが追加
  • 育児のためのテレワーク:所定労働時間の短縮措置等の改正とは別に、3歳未満の子どもを育てる従業員に対し、働き方の1つとしてテレワークを選択できるようにすることが努力義務化
  • 育休等の情報公表:男性従業員の育休の取得状況の公表義務の対象となる企業の従業員数が「常時1000人超」から「従業員300人超」に引き下げ

(2025年10月1日から)

  • 柔軟な働き方を実現するための措置等:3歳以上小学校就学前の子を養育する従業員に対し、短時間勤務などの措置を2つ以上実施し、そのうち1つを従業員が選択できるようにすることが義務化。また、子どもが3歳になる前に、措置等の内容を個別に従業員に周知し、利用の意向を確認することが義務化

以上

(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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